第9話 無職 VS JK(全年齢対象)

 まさか相手が女だとは思わなかった。しかもよく見れば高校生ぐらいじゃないか。年下にトラウマがある僕としてはあまり関わりたくないが、ケモミミのためなら腹を括ろう。

 



 多少想定外ではあったが、計画変更の必要はない。僕の使えるスキルは5つ


・回復呪文『ホイマ』

・攻撃強化呪文『バイキルク』

・素早さ強化呪文『メタスラ』

・強制睡眠呪文『ラリルー』

・物理反射技『カウンター』


上手いこと隙を作り、ラリルーで眠らせる。




 簡単なようだが問題点があり、スキルは発動させるために技名を言う必要がある。その為『カウンター』などと言えば相手は攻撃を止めるだろうし、当たる直前に唱えても間に合わない。なにより言ってる途中に攻撃されたら詰みだ。その為かなり大きな隙を作らねばならない。



 脳筋有利なこの世界に不満を抱きつつ、彼女を観察する。機動性重視の装備だが、小ぶりな剣を構えているため戦士だと思われる。

ぱっと見普通の女の子だが、何か得体のしれないな怖さがある。これは慎重に───


「ちょっといつまで突っ立ってるのよ。怖じ気付いたの?」


 怒られた。実際ちょっと怖じ気付いてる。


「そんなことないよ、ケモミミ娘に見とれてたのさ。さあケモミミ娘を賭けて勝──って危ねえ!」



 僕が口上を述べている最中に斬りかかっててくるとは、無礼なやつめ。いや、そんなことより───


「こいつ結構強い‼」


 咄嗟に剣を抜き受け止めたものの、体勢を保てず後ろに飛ぶ。想像以上の速さと力強さだ。もう少し反応が遅れていたらモロにくらっていた。町を1つ乗っ取ってるだけあってかなり強い。



 何度攻撃を仕掛けても彼女が僕の先を取っているため僕の攻撃は通らず、いつの間にか防御に回らせられている。



 かなり苦しいが、分かったことがある。

彼女が何か特別な能力を使った様子はない。そして、レベル40程の勇者に匹敵する実力の僕を上回る身体能力。十中八九、彼女の能力は肉体強化だ。ならばそれを上回れば僕の勝ち。


 一度距離を取り、彼女に聞こえないよう小声で強化限界までメタスラとバイキルクを唱える。そして一気に───


「突っ込む!」


 僕は一直線に彼女めがけて飛び出す。予想外の速さに驚くも、直ぐに彼女は防御の体勢を取る。振り下ろされた僕の剣は受け止められ、耳に優しくない音を立てる。瞬間、体を捌き、剣を返して防御で空いた胴を切り下ろ───



────せない。剣は空を切った。


「やるねおじさん。なんかやってたでしょ。私もやってたから分かるよ」


「おじさんって.....。でもよく分かったね、剣道やってたよ、ちょっと昔にね。それにしても君は強いね。武器の能力が気になるよ」


「え?私まだ能力使ってないよ」


なんですって?


「ここに来る人いっつも勘違いしてるんだよね。こんな城に近い町に強いやつなんかいないって。でも残念、見た感じおじさんはレベル40弱位だけど、私はレベル75。私、普通に強いの」



 完全にお恥ずかしいやつだ。

 ‎

 ‎

「ちょっと大丈夫⁉やっぱり私も───」


「大丈夫。俺は伝説の勇者だよ、心配いらないよ」



 よしこと連携すれば勝ち筋はあるが、殺してしまう可能性がある。それだけは避けなければならない。なんとか勝ち筋を見つけなくては。

 

「へえ、おじさん伝説の勇者なんだ。これまで来た人たちの中でも一番強いし、能力使っちゃおう!」


 僕余計なこといっちゃったみたい。



         ✢ 



 彼女が能力を使うと宣言してから僕は彼女の攻撃を"受ける"ことすらできなくなった。

全ての攻撃が僕の行動の裏をついている。正直全く能力の正体が掴めない。なんとか体勢変えて致命傷は避けてるが、もう限界だ。殺されはしないようだし、ケモミミは諦めるしかないか。



「これで最後だね。気絶で済ましてあげるから観念しなさい」 


 勢い良く彼女が床を蹴る。回避を予測され攻撃されたらモロにくらってしまう。ここは下がりながら正面で受けて威力を殺す。



「バレバレだよ」



 やはり彼女は僕が何をするか分かっているようで、後退することを見越して蹴り出していた。ちょうど剣の力が伝わる間合いで攻撃されてしまった。


 あれ、これ死ぬな。気絶させると言っておきながら攻撃が強すぎる。お互いのHPが見えるシステムだから大丈夫だと彼女を過信していた。こいつドジっ娘だ。まずい───





.............あれ?



 時が止まっていた。周りの空間の人が全て動きを停止している。



僕を含めて。



あれ?これ僕の能力かな?






本人止まったら意味ないんですけどおおおおおおおおおおお!

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