第1話後編 無職、ホームシック
「勇者様がきたぞおおお!」
「"伝説の"勇者様だ!」
歓声の中奥へ進むと王様っぽい人がいた。
「よくいらっしゃいました勇者様。お名前は何と申されますかな」
ここでキャラメイキング的なのをするのだろうか。たいした名前じゃないし、せっかく変だから勇者っぽくしとこう
「ぼっ、僕の名前はゴッドウィンオースティンです!」
やっぱ恥ずかしい。止めとけばよかった。
普通に本名にしとこう。
「申し訳ない聞き取れませんでした、すみませんがもう一度....そうだ、あちらの世界からあなたに関する資料をいただいていました。あなたは"無職"とおっしゃるのですか。いい響きの名前ですな」
⦅名前を登録しました⦆
なんか脳内メッセージ的なの出て来たんですけど。あの女やりやがった。
とりあえずこの世界に無職という言葉が無いようで助かった。まあ仮面ラ○ダーも無職多いしいいか。
「では無職殿、本題に入りますが、あなたの"伝説の"武器を教えていただけませんか」
やはりこの質問が来た。頼むからこの世界にパソコンという概念がありませんように。
てかあれ武器なのかな。
「私の武器はEnterキーです。」
「ん、Enterキーというのはあのパソコンのですかな?」
だめでした。
「はい、そうです。このEnterキーで世界を救ってみせます(熱い決意)」
「はあ、そうですか(蔑み)。お前たち、勇者様の出発の準備をしてさしあげろ」
明らかに反応が悪くなったが、それもそうだろう。周りの人たちも
「あれが待ちに待った"伝説の"勇者かよ」
「また千人待ちかよ」
などと訳の分からないことをおっしゃっている。
僕は旅の資金をもらって足早に城を後にした。もう今日は遅いので宿へ足を運んでいると
❰ご機嫌いかがですか、大歓迎だったんじゃないですか?❱
いまいましい女の声が聞こえてきた。
「どこにいるんだよ。勇者"無職"って意味が分かんないでしょ」
❰私は元の世界からテレビを見ながら話しかけてます。この天の声的なのはチュートリアル的なやつなので何かご質問があればお答えしますよ❱
大変ムカつく。
「聞きたいことは山ほどあるんだけど、先ず、この世界に来たみんな"伝説の"勇者だと思ってたんだけど違うっぽいよね。」
❰その通りです。千人に一人、その者の願いに添った"伝説の"装備を与えています。
10人"伝説"の勇者がいましたが、今はもうあなたを含め4人しかいません。❱
千人待ってやっと来た"伝説"の勇者の装備がEnterキーだったらあの態度も納得できる。ただの勇者なら笑えるが、おそらくは数年、下手したら数十年に一度の勇者がネタ装備だったら殺意を覚えるレベルである。
「まともに攻略するつもりはないけど、一応この世界の攻略方法を聞いてもいいかな。」
❰魔王的なのを倒すだけでクリアです。いつでも魔王的なのがいる城に挑戦はできますが、魔王的なのの手下の魔物から人々を救って力をつけてから挑むのがスタンダードな感じですね。❱
割りとオーソドックスなタイプだ。
ただ、無駄にダンジョンを回らないでラスボスに挑めるのは面白い、やろうと思えば一ヶ月とかでクリアできるのだろうか。
早く帰りたい。
「ちなみにこちらの一年は現実世界の一時間みたいなシステムは」
❰こざいません。失踪届けが出される前にクリアすることをおすすめします。❱
多分無理だよね、それ。
もぅ今年中の就職無理かも。。。でも今年駄目だったら親に実家追い出されるの。。。
なんとしても速やかにクリアせねば。
「ちなみにこのEnterキーの使い方教えていただけます?」
❰そのうち急に分かりますよ、仮面ラ○ダーみたいに。❱
「そこを何とかお願いします、僕の冒険ナイトメアモードすぎるんです。」
❰面倒くさいのでもう終わりますね。また機会があればまたお声がけしますね。そちらからの連絡は受け付けかねます。
デデーン『山○アウトー!』
.......ではまた機会があれば。❱
そういえばそんな季節だった。こんなことなければ、今頃こたつで見てたのに。
そして最後に彼女は
❰大体ドラ○エみたいな感じなんで頑張ってくださいねー❱
見も蓋もないことを言ってフェードアウトしていった。あまり情報が得られなかったが、とりあえず目標は決まった。
1年以内にこの世界救う。
あ、今日は疲れたんで明日から本気だしますね
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