第2話 無職、転職する 


1年で世界を救うと豪語したが、いまいち何から始めていか分からない。

ドラ○エと同じシステムと言われたのでとりあえずル○ーダの酒場的な場所に足を運んだ。



宿の隣に位置する酒場に入ると中は勇者っぽい人たちが沢山いた。辺りはほぼ10代の若者の上、みな豪華な装備を身に纏ってるため、tシャツにチノパンで三十路間近の僕は大分浮いている。とりあえず店の人に話しかけてみる。



「すみません、冒険に出たいのですが何をしていいのか分からなくて.....」


「まずは装備品をそろえたらいかがでしょうか。その格好ではスライムにも勝てませんよ。この酒場では下位職に限りますが転職をすることもできます。職業ごとに使える技などが変わるのでよく考えて決めてくださいね」



スライムいるのかよ。

そんなことよりも職業というシステムがこの世界にもあるのか、みんな平等に勇者だと思っていた。


「ちなみに現在の職業とかってどうやって確  

 認するんですか?」

  

「勇者様....ですよね?」

「こんなんですが一応」


「でしたら、王城で"ステータスブック"を受けっていると思います。そちらに現在の職業、ステータス、など様々な情報が記載されております。その本は勇者様のステータスが逐次更新されるようになっています」



とりあえずバックの奥底から本を取り出し、今の職業を確認してみると、『無職』と記載されていた。名前と見間違ったと思ったが、名前の欄にもしっかり『無職』と記載されている。頼むからもう少し『旅芸人』とかオブラートに包んでほしい。


てか、この世界に無職って言葉あるのか。

何が『いい響きの名前ですな』だよ。

あの女も王も揃って性根最悪だと分かったところで



「すみません、この無職といのは....」

「こんな職業みたことありませんね(哀れみ)、大抵最初は『旅芸人』なんですけど....でもこれなら転職の際に現在よりステータス下がったりしませんよ」


気遣いが痛い。

何はともあれ、とりあえず職業を決めた方がよさそうだ。


勇者"無職"職業『無職』


では魔王にワンチャンも勝てなそうだ。



「すみません転職の手続きをしたいのですが」

「ではこちらのカウンターで必要な書類に記入をお願いします」


案内されたカウンターで職業一覧を見ると

剣士、武道家、槍使い、魔法使い、メジャーな職業は大抵あるようだ。

魔法とかもあるんだねこの世界。

ここらへんから選ぶのが妥当だろう。


しかし、9000人以上がやられているこの世界で、多くが選びそうな職業ではたして魔王的なのを倒せるのだろうか。誰も選ばなそうな職業が攻略への糸口となるかもしれない。


「すみません、誰も選んでないような不人気な職業ありませんか?」

「そうですね、圧倒的に選ばれてないのは『暴れん坊』と『器用貧乏』ですかね」


なんだそれ。

確かに普通に考えて選択される可能性は皆無だ。


「『暴れん坊』ってのはどんな職業なんですか?」


「こちらは島国由来の片刃の刀で馬に乗って戦う職業です。上位職は『将軍』です」


 なるほど、大体想像がつくが、誰かがこの世界に新しい概念の職業をもたらしたらしい。他の若い人達が選ばないのも分かる。元ネタがわからない上にほぼ戦士と変わらない。


「ちなみに、戦士とどう違うんですか」

「はい、上位職の『将軍』になりますと、相手の魔力を減少させる固有奥義『サンバ』を使えます。」 


なんてふしぎなおどりなんだろう。

意味の分からない差別化をしないでほしい。

この職業はちょっとやめとこう。


「すみません、『器用貧乏』はどんな職業ですか?」

「上位職は『魔法戦士』こちらの職業は戦士系のスキルと魔法の両方を使えるという画期的な職業です。ですが、多くの勇者様はこの世界に詳しい方が多くて『微妙なんだよね』などとこの職業をお選びになりません」 


あー、なるほど。

確かにドラ○エとかだと不遇なことが多い。

たまに強いんだけど。

彼女はこう続けた

「いろんな職業のスキルや魔法を使えますが相当レベルを上げないと、ホ○ミとかしか使えません。魔法使いがメ○ゾーマを使えるレベルでもメ○ぐらいです」


んー、強いような気もするが微妙だ。悪い意味で。短期で攻略したい僕には向いてない気がする。




よし、決めた。


「やはり、戦士や魔法使いなどがおすすめですね、すぐに高レベルの魔物に対応することができますし」


「いえ、『器用貧乏』にします。登録お願いします」


「では『器用貧乏』で登録させていただきます。縛りプレイもいいですがちゃんと魔王的なのの退治もしてくださいね」


 なんなんだこの世界の人達は。何故かちょっとだけ最後煽る。


 難しい職業なのは分かるのだが、Enterキーが物理なのか魔法なのか、はたまた攻撃するものかすら分からない現状ではどちらも使えたほうが便利そうだ。


 この職業が攻略の糸口となることを願いつつ、Enterキーの使い方が判明してダメそうだったら早いとこ転職しよう。


【無職は器用貧乏になった】


 なんかまた脳内メッセージ出てきた。思いの外あっさり転職できてしまった。儀式とかないんだね。



とりあず、さっそく攻略を始めよう。何年もここで過ごして戻ったら僕は完全なる三十路として現世に降臨することになる。『潤滑油です!』とか言っている場合ではない。消費期限切れだ。


『器用貧乏』になった僕はその流れで酒場の隣にある武器、防具を売っている店に足を運んだ。現状Enterキーだけでは戦えそうにないので。


そして、最も気になっていた質問をした。



「すみません、職業によって装備できないものってありますか。」


それを聞いた店の主人は笑ってこう言った


「ドラ○エじゃあるまいし、職業によって適性はあると思いますが、装備できないものなんてないですよ。」 


そこは寄せていかないのかよ。


 しかし、現実的に考えればこれが普通だ。

弓や槍なども使えるなら、かなり戦術の幅が

広がるだろう。


 王城でかなりの額をもらったので、とりあえずこの店で一番高い『器用貧乏』向けの防具と武器を一通り買って帰路についた。


 レベリングに入る前にある程度今後の予定を考えた方がよさそうだ。短期で魔王的なのを倒すのにあたって必要なアイテムや上位職に転職する条件、場所を踏まえて効率よく魔王的なのの城へ進んでいく必要がある。


 ある程度、王城にあるという資料室でこの世界の情報を集め、計画を練るべきだろう。


 パーティー組めれば楽だろうな。こんな無職のおっさんと組んでくれるやつがいればの話だが。


......



今日は寝よう!疲れたし。明日から本気出そう。

宿に戻りさっそく就寝しようとしたところ外から


「キャーー、助けて、help、Aidez-moi!」





グローバルに助けを求める声がした。

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