第3話 無職の出会い、童貞の涙、故にEnterキー覚醒

窓から外を除くと女性が3人の男に囲まれていた。あるあるだ。多分そういうイベントだろう。こーゆーのは普通の勇者様に解決してもらうに限る



のだが、よく見ると全員日本人っぽい。この異世界の北欧系な人たちの中で日本人がいるとしたら、あの女に送り込まれた人間だ。


詰まるところ、こいつら4人揃って勇者である。


「なあ、俺たちとパーティー組まない?」


「俺たちなら余裕で攻略できるから」


「俺のエクスカリバーで倒せないやついねえしよ」


 

 エクスカリバー受け取ったのこいつか。

厨ニ病こじらせたやつが強そうな装備を手に入れてイキってるのかな。そんでもって多分こいつら全員童貞。



あと最後の下ネタだろ。



「止めてください、あなた達と一緒に冒険してる暇ないんですよ。もう今から魔王の城的なの行くんで構わないでください」


 華奢な体に腰まで伸びた長い髪、無駄に大きな鎧をまとった彼女の姿はどっかのアニメで見た強キャラ感がある。

 しかし、よく見ると鎧が重いのか顔は真っ赤で足は震えに震え、生まれたての子鹿にデスソースを飲ませたようである。

 ‎

 見たところこの世界に来たばかりのようだが、もう魔王的なのを倒しに行くつもりらしい。


この女性がかなりクレイジーなことを言っても、童貞'sは諦めずに彼女を誘う。

こんなやりとりを十数分繰り返し、ついに彼女は童貞'sにとどめを刺した


「ほんとにもうやめてください。私彼氏いるんでワンチャンとかないですよ。ちょっと親切で道案内してあげたぐらいで勘違いして、これだから童貞は.....」


彼女はとても人を見る目があるようだ。

頑張れ童貞's。平常心だよ、負けるな。


「なんだよ、調子乗りやがって」


「俺のエクスカリバーの方がお前の彼氏より良いに決まってんだろ」



だめでした。

確かに童貞には無慈悲過ぎる宣告だ。

だが、これもいい経験だよ童貞's。


あと下ネタやめてね。




 彼らに感情移入してたが、よく見るともうhave a fight しそうな雰囲気である。

この世界の人々の揉め事ではないようなので分別ある大人として一応止めておこう。

彼らも言えば分かってくれるだろう。


「まあ君たち落ち着いて、勇者同士揉めるのはよくないよ、世間体的にも」


「なんだよ、おっさん邪魔しやがって」

「おい、やっちまおうぜ」



 キレる若者怖い。ここは素直に退くところでしょ。全員NPCなんじゃないかと勘違いするくらいベタな展開になってしまった。どうしよう、怖い。


 優等生だった僕に喧嘩の経験などない。

人を殴ったことも殴られたこともない。

もちろん父さんからも。



彼らは武器を構える。

なんか全部アニメで見たことあるぞ。

エクスカリバーっぽいのと、グングニルっぽいのと、ロンギヌスっぽいの。


槍職パーティーに2人いらなくないですか。



 ともかく、揉め事はすべて話し合いで解決できると教わってきた僕にはこの状況はかなり危機的で、カルチャーショック感が半端ないわけでして、なんとか乗り切らなくては。



「まあまあ勇者同士友好的にいこうよ」


「構えろよおっさん。勝ったほうがこの女をパーティーメンバーにできる、負けたら海にボチャン、それでいいだろ」

   


 よくねえ。彼女の人権を完全に無視した彼の言葉には少しムッとしたがそれどころではない。やり合ったら確実に死ぬ。Enterキーどうやって構えるんだよ。


こいつら絶対に排他的経済水域の広さ分かってないだろ。ましてや今は1月、9割9分死ぬ。


「構えないならこっちからいくぜ」


ロンギヌスの童貞が突っ込んでくる。 


 僕は無職のまま死ぬのか....。お母さん、今まで迷惑かけてごめん。お願いだから僕のパソコンの『就職関係_e』という無駄にファイルサイズの大きなフォルダを開かないでください。

 ‎

 神様、次の人生はどうかイージーモードにしてください。



神にも祈り終わり、死ぬ準備万端な僕の胸ををロンギヌスっぽいのが貫く瞬間、 辺り一面を眩い光りが包んだ。徐々に僕の周りに光りが収束していく。 


(封神○義の封神ってこんな感じかな)


そんなことを思った直後、僕の意識は途切れた。





…a…you…k?...大丈夫ですか?..Ça va!?

グローバルに呼びかけられてる。外国の漁船に救助されたのだろうか。目を開けると




知らない天井だ。




あとさっきの彼氏持ちの女がいた。


なんか助かったらしい。



「よかった!大丈夫ですか?」


「はい、多分。僕どのくらい気を失ってました?」


「5、6時間くらいだと思います。助けていただいて本当にありがとうございました」



どうやら僕が彼らを何らかの方法で追っ払ったらしい。そしてその後、彼女が僕を自分の宿まで運んでくれたようだ。

助かった。


心配そうに僕を見つめる彼女の顔立ちはかなり整っていて、よく見るとちょっとイモっぽいけど可愛い。









なんかムラムラする。

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