第4話 無職とNTR(全年齢対象)

 薄暗い宿で女の子と2人。ちょっとムラムラする展開だが、27歳、さすがに性欲に理性が勝つ。 





ギリギリ。




彼女に僕が気を失った後のことを聞いた。こんな感じだったらしい。




《5、6時間前》 


男のロンギヌスっぽい槍が僕の胸を貫く瞬間、辺りを眩い光が包む

「Oops!、なんなんだこの光は」


「OMG、俺のロンギヌスが壊れちまった!」



男の槍は砕け散っていた。明らかに何か人為的な力によって破壊されていた。



「落ち着け、ここは戦略的撤退だ」


男たちは一目散に逃げていった。




………




 当事者は全員日本人だった気がするが、今はツっこむ余裕がない。 

 ‎


 攻撃されたのは丁度Enterキーが入っている胸ポケット。

これまでの経験(ラノベ)上、このEnterキーの能力で男のロンギヌスっぽいのを破壊し、その能力の反動で倒れたと考えるのが妥当だろう。



 とりあえず今回の件でこの世界の死のシステムを理解してないクレイジーなやつもいると分かった。少し気をつけよう。




 体はもう何ともなく、楽に起き上がれたので自分の剣で試しにEnterキーに触れてみるが特に反応はない。触れた武器を破壊するというチート能力ではなかった。

 ‎

 ‎試したいことはまだあるが、彼女に礼を言うのが先だ。



「わざわざ部屋まで運んで頂いて、手当てまでしてくださってありがとうございます」


「いえいえ、あの伝説の勇者に助けて頂けるなんて光栄です」



 何故彼女は僕が伝説の勇者だと知っているのだろうか。町中の人間に顔バレしていたとしたらかなり面倒だ。

‎そんなことを考えていると彼女はこう続けた。



「私が転送?された時、チュートリアルとかあるのかなって思ったら、すぐ出発させられちゃって、その後すぐ城がお祭り騒ぎみたいな感じだったので覗いて見たら貴方がいて…」



 なるほど、彼女は幸か不幸か9999人目の勇者だったようだ。無駄にかしこまった態度を取られるのも恥ずかしいので、彼女に事の詳細を話したところ



「なんだそんなことだったの、てか私ちょー惜しいじゃん」



 もうちょいかしこまれ馬鹿野郎。苦手なタイプの人間だ。やめとけばよかった、ちょっとうざい。


 少し話しやすくなったので結果オーライとする。彼女にはいろいろと聞きたいことがある。



「君はどうしてそんなに急いで魔王を倒そうとしてるの?」


「私の彼氏が今留学してて、来年帰ってくるの。だからワンチャン負けても泳いで帰ればいいし早く帰ろうと思って」



君もわからないんだね(絶望)



 簡易な地図を書いて排他的経済水域の範囲を説明してあげると



「え、そんな広いの⁉死んじゃうじゃない!」

 


 良い子なのは確かなんだけど、ちょっとオツムがハッピーセットな子みたいだ。 



「それで君はカナダに留学してる彼が戻ってくるまでに元の世界に戻るため魔王的なのをすぐ倒したいのかな?」


「え、なんでカナダ行ってるって分かったの!」


 彼女は大きな目をさらに見開き不思議そうに尋ねる。


「君が英語とフランス語使ってたから彼氏さんに影響されたのかなって思って。どっちも使ってそうなカナダかなって思ったんだけど当たったみたいだね」



 別にカナダじゃない可能性も大いにあるのだが、なんか当たっちゃったんで得意げに答えておく。 



「すごい!でも、確かにそうなんだけど、それだけじゃないの......」


ちょっと俯いて彼女は続けた



「1万人もこんな世界に無理やり連れて来られて、死んじゃったら海に落とされるなんて可愛そうって思って。悪魔の実食べてたらもっと大変だし」



これは真面目な感じで聞いてていいんだよね?

本格的にハッピーな娘のようだ。



「それでさっき経済水域の広さ聞いたら思ってたより状況は最悪で。やっぱり早く魔王的なの倒さないとって」




なんというか、危なっかしくて頭がポンコツで外国被れだけど、眩しいくらい真っ直ぐで



NTR趣味のない俺には彼氏持ちの女の子なんて興味ないけど




どこかあいつに似てるから




僕の口はひとりでに動いていて




「一緒に攻略しませんか、僕も早く帰らなきゃいけない理由があるんです。それに君に協力したいって思ったんです(イケボ)」


「え、普通に無理です。感謝はしてますけど調子に乗らないでください。ちょっと優しくするとこれだから童貞は...」


「童貞じゃねえよ!キャラが二転三転してもう君が分からないよ!」


「どうせあなたも体目当てなんでしょ、薄い本みたいなことしたいんでしょ!さっきの奴らもあなたが邪魔しなきゃ海に落としてたのに.....」


「なわけあるか!てかさっきと言ってること矛盾してんぞ!」


 しまった、素が出てしまった。イケメンお兄さんキャラに戻らなくては。完全にいける流れだと思ってたので、恥ずかしさがここに極まる。


そんな事を考えてうろたえてると


「ふふ、面白いねあなた。いいよ組んであげる。その代わり私を毒牙にかけようとした瞬間、痛みを感じる間もなく海に落としてあげるから」



なんかよくわからないけど勝手に解決して、勝手に仲間になった。



やったー

何か信頼感に欠けるけど仲間getだよー







でもなんかもうムラムラしない。




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