第2章 ケモミミは正義、忘れないでenterキー

第7話 無職の努力、ケモミミを救う

 昨日あった事をよしこに話し、ステータスブックを見させてもらった。


 やはり、ほとんどのステータスが僕の4倍近く高い。しかし、何に使うか分からない『偏差値』のステータスだけ彼女は僕の半分程だ。まあ、妥当か。



「あなた本当に可哀想ね」  


「そんな哀れみの目で見ないで。なんやかんや楽しくやってるからさ。ちなみに双剣使えるのはよしこだけのユニークスキルみたいだよ」


 いきなりユニークスキル持ちとは、本当に酷い優遇だ。僕がキ○トくんだったらぶん殴っている。


「だから最初から私は『剣聖』だったんだ。ルイー○の酒場的なのに行ったら転職したら劇的に弱くなるから止めた方がいいって言われたんだよね」


 本当に酷い優遇だ。ちょっと無職だからって異世界でまで無職にされたのに。


「じゃあやっぱりこの攻撃スキル『スターバー○トストリーム』も私だけの技なんだ」


それも使えるの⁉もうキ○トくんが泣いて22層の家から出てこなくなるレベルだ。

 


「まあ、元は君の技じゃないし、その技見られたらまた変な奴ら集まっちゃうから、そんなに人前で使わない方がいいと思うよ」


「そうだね、キリ○くんに敬意を払って大事な時にだけ使うよ」


         ✢


 レベル10になり、『器用貧乏』の僕が初めて覚えたスキルは回復呪文『ホイマ』だった。その為、戦闘面で役に立たない僕は彼女のサポートに徹していた。


 一日のノルマを達成し、彼女と別れると僕は彼女に追いつくため一人でレベリングをしに行った。敵がアレなので心も体もしんどいけど、1年以内に元の世界に戻るためにも、吐き気と戦いながら地道な作業を行った。


 そして一週間後、お互いに目標であったレベル20に達した───ふりをして、あのスライムとの別れを喜んだ。


「「スライムとの別れに乾杯!」」


 酒場で僕らは祝杯を上げた。寝ずのレベリングで極度に疲労の蓄積した僕は一口目を口に含む前に意識が途切れた。


「女子との食事中に失礼なやつだなー」


「むにゃむにゃ....女子().....」


「こいつ素はクソ野郎なのね。まあ、最近は攻撃面でも役に立ってくれてたからいいか。─────いや待ってよ、もしかして......」



         ✢


 目が覚めると、今回は見たことのある天井だった。よしこの部屋だ。


「あ、起きた?あなた運ぶの大変だったんだからね」


「いやあ、ごめんごめん。レディとの食事中に寝てしまうなんて勇者『無職』一生の恥だよ」


「あなたねえ......。そんなことよりあなた、さっき不可抗力でステータスブック見ちゃったんだけど、レベル70ってどういうことよ!この世界レベルの最大値100でしょ。なに最初の街でカンスト間近になってんの!」


「不可抗力って....。いや、それは君の力になろうとして──」


「そんなの分かってるよ、あなたがそういう人だってことは。私が言ってることはそういうことじゃなくて、なんで、なんで────」


 彼女は大きく息を吸って叫んだ。




「なんで私よりちょっと弱いのよ‼」




 そう、僕のレベルは70。地獄のようなレベリングでこの境地に辿り着いた。5徹でなんとかここまで仕上げることができた。ドラ○エならラスボスに挑んでもおかしくないレベルだ。


 しかし、レベルアップ時のステータスの伸び具合も常に僕は常人の半分、彼女は倍であるため僕がレベル20の彼女より弱いのは明らかだ。説明してたはずなんだが、あいつはちゃんと聞いていなかったようだ。



「多分そのうち最強キャラだって判明するからちょっと待っててよ、藍染惣○介みたいにさ」


「そう...(不安感)。でもあなたが一週間死ぬほど無茶したぐらいでレベル70になれるなら、魔王的なのに辿り着くころ、どの勇者もレベルMAXだよね。どうして倒せないんだろう」


「何か特殊な能力があったりするのかもしれないな。そこらへんの情報を集めるためにも早々にこの街を出よう!」



         ✢


 翌日、僕らは図書館でこの世界の地図を見せてもらった。この街の遥か遠くに魔王の城的なのが記されている。


 短期攻略のためにも僕らは、魔王の城への通り道の町や神殿に拠点を置いて、レベリング、情報集めをし、魔王の城へ進んで行くことにした。


 そこで僕達が最初に目指した場所は──


──マタタビ町


「絶対ここはケモミミ娘がいる!憧れのケモミミ娘が!」


「ちょっとキャラ変わってるよ。ケモミミ娘はいいとしても、絶対にこの一帯にいるモンスターは───」  


「「可愛い!!!」」 

 



 館長に聞くと本当に猫耳キャラばかりの町らしいので、満場一致でこの町を目指すことが決定した。僕らは地図を鞄に詰め、足早にこの街を出発した。後ろから館長が「貸出禁止なんですよーー」と追いかけてくる幻が見えたので、早く猫キャラに摩耗した心を癒やしてもうため走ってマタタビ町へ向かった。



         ✢



 急いで走り過ぎたためモンスターにエンカウントすることなく到着してしまった‎(館長は撒きました)。新天地マタタビ町で僕らを出迎えたのは猫耳の──




──おっさんでした。


「ああ、やっとこの時が!貴方は勇者様ですよね!どうか、どうか我らをお助けください‼」


 僕を強く抱きしめる初老の猫耳。なんだこの状況は。久しく勉強をしてなかった僕はマイナスにプラスを掛けてもマイナスな事を思い出した。


 

 落ち着いた猫耳に事の詳細を伺ったところ以下のようであった。



 

 ある日マタタビ町を訪れた勇者は強力な武器で人々を脅し、町を制圧。‎若い娘達は勇者が占拠した領主の屋敷で強制的に奉仕させられている。

 ‎始めは別の勇者が助けに来たがことごとく返り討ちに遭い、その噂が広まり誰も訪れなくなった。



 なるほど、なるほど.........館長教えろよ。これは借りパクされても仕方がない。


 僕たちは攻略の際、無意味に人助けなどをして目立つ行為はしないことにしていた。主に彼女の能力がバレないようにするためだ。

しかし、今回は話が別だ。僕の───  



「僕のケモミミ娘を独占するなら勇者でも容赦しねえ!人助けにもなるっぽいし合法的にブチのめしてやんよ!」


「キャラが酷く変わってるんだけど........。いいの?目立つことしちゃって」


「今回は任せてくれ、僕だけでやる。伝説の勇者『無職』ケモミミ娘のためなら本気を出そう。そしてお礼にいいことしてもらうんだ!」


「そう、頑張って(軽蔑)」



 初老の猫耳に悪い勇者を追い払うことを誓い、力強く握手をした。






 勇者『無職』、そろそろ本気出します。

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