3日目
倉庫を出た後は愛佳と別れ、自分の牢屋に戻った。
俺の牢屋は4畳ほどの広さで布団とテレビ以外何もない。
このテレビも仕事が終わってから消灯時間までの数時間しか見られない。
娯楽らしい娯楽は一切ない。
シャワーは交代制で、自分の番になると看守が呼びに来る。呼ばれたときに返事できないとその日はシャワーが浴びることができなくなる。
鉄格子があるおかげで、外界と隔たれた感覚はあまりないのにしばらくここに住んでみると不思議とこの狭い牢屋の中の居心地がよくなっていくのがわかる。
なんというか、ホッとする。
「少し横になるか」
どうせシャワーまでは1時間くらいある。横になるくらい大丈夫だろ。
布団をめくると、ん?
敷布団と布団の間に何か紙が挟まってるな。
ただのA4コピー紙が二つ折りにされてる。
……。
…………。
………………はっ⁉
これは、ラブレター⁉
うっほ、なるほどなるほど。
やはりこの人生はバグってなんかいなかったんだな。
牢屋の中で充実した生活がおくれるっていうわけですか?
つまり、そういう事なんですよね? NLLさん?
「よしよし、ならば見ちゃおうか。さ~て、どんな文面で俺の心を鷲掴みにしてくれるんだい?」
ぺらり、ラブレターを開く。
『こんにちは、元気ですか? 最近は過ごしやすい気候になってきました。今度面会に行くときに一杯お話ししたいのであまりここでは書きませんが――また会える日を楽しみにしています。母より』
……。
「おかあさーーーん‼」
顔も知らない私のお母さま。
息子の人生を奪ってしまって申し訳ありません。ですが、なぜ私はここにいるのでしょうか。お母さまは止めることができなかったのでしょうか。面会に来た時に聞かせていただきたいと思います。
あー、申し訳ないけど拍子抜けました。
「次! Cフロア、シャワーの準備!」
あれ、結構早いな。
まあそういうなら早くいくか。
準備といっても支給されているパジャマを持っていくだけ。
パジャマを持って、牢屋のカギを開けてもらうのを待つ。
ガチャリ、新入りの奴はこの瞬間に抜け出そうとするが、当然看守側もそれくらいは心得ている。シャワーは5人1組のフロアごとに入ることになっている。
いつもは5人に1人の看守だが、この時ばかりは1人に2人の看守が付くという厳戒態勢。
ここで抜け出すのはさすがにおバカ。
「C―4!」
「はい」
ようやく俺の番が回ってきた。
いつも通り1人の看守が俺の牢屋のカギを開け、もう1人が俺の見張りを行っている。
重く寂れた鉄格子のドアが開いた。
パジャマを持った俺はそのまま扉をくぐり、一時的に解放される。
横を見ると、ほかの囚人たちも続々と出てくる。
その後俺たちは一列に並べられ、その両隣を看守が挟んでシャワー室まで向かう。
道中ほかの囚人たちの生活を見ることができる。
シャワー室に差しかかる直前、フロアで言うとAフロアの前を通り過ぎるとき。
「おっとっと」
俺はよろけてしまい、横の牢屋の鉄格子にぶつかってしまった。
「おい!」
看守の怒号が響く。
鉄格子のすぐそばにいた中の囚人に軽く謝り俺はすぐに列に戻った。
「まいどあり」
かすかだが、中の囚人は俺にそういった。
さっさとシャワーを済ませた俺はまた同じように牢屋に戻ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます