第6話 観音様

朝いきなり魔王が言いました。

「観音様を見に行くぞ!」

じいと子魔王は

「急にどうしたんだ!?」

魔王の命令なので、じいは車の準備をしています。

何かを真剣に考えながら、車で観音様へ向かう魔王。


「ついたぞ!観音様」

じいが車を駐車場に寄せて、魔王に言いました。

無言のまま車を出て、歩きだす魔王。

手には数珠が握られてます。

観音様のひざ元、施設の入り口で、やわらかく、声をかける係員。

「おかあさん、チケットを買ってください」

魔王はなにかの念仏を唱えながら、観音様へ進んでいきます。

係員の言葉は完全スルー。

「おかあさん、あの~料金を頂かないと……」

魔王を止めに入る係員。

係員の静止にも、まったく動じず観音様へ向かって歩いていきます。


「おかあさん、困ります!」

ジロリ、係員を見た魔王。

「今日の朝……夢を見た」

「はあ?なんでしょう?」

意味が分からない係員。

「今日の朝に、観音様がおれの枕元に立った」

「それがどうしたのでしょう?」

怒り出す魔王。

「ばかもの。観音様が枕元に立った……つまり、おれに会いたいと言ったわけだ!」

「ええ?」

「だから、会いに来ただけだ!!」

「いえ、だから料金を……」

料金をもらおうと頑張る係員に、魔王が一喝!

「うるさいだまれ!おまえには関係ない!おれと観音様との話だ!」

その後は何も言わずに、観音様へ進み、最後に数珠を手に頭を下げた魔王。振り返り、車に戻ってきた。

「さあ、帰るぞ」

ブオオオン、車が走り去りました……

あっけにとられている係員が呟いた

「あ、チケット代……」


観音様、日本が元気になりますように!

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