第9話 12/23(祝) 22:00

「ふぅ」

風呂上り、さっぱりした所で自室に戻る。

机の前に陣取り、ファイル立てからノートを取り出す。

「今日のまとめ、しよう」

いつものように、声に出し確認。

ノートを開くと、昨日書いていた図が目に入る。

「まず、このだ」


本屋から帰り、自室の違和感から開いたノートには、昨晩書いた覚えのないモノが書かれていた。

眠くて記憶にないだけか、と思い返してみたが、そもそもこのような書き込みをする理由がなく、その可能性は否定された。


「この、花マル…そういうこと、だよね」

おかーちゃん→サンタ組織、と書かれたところには、赤で花マルが書かれていた。

そして、サンタ組織で囲った『おとーちゃん?』と書いたところには、ハテナを消すような二重線が。

「つまりこれは、おかーちゃん、にたどり着いた私へのご褒美、ってこと?」

花マルと二重線。

タイミングから考えて書き込んだのはリョウコの母で間違いがない。

つまり、

「ここの、おかーちゃん、と、おとーちゃん、についてはということ…」


「そして…」

言いながら、グァバジュース、と書いた所へ『おとーちゃん』から矢印を引く。

矢印の上には『好き』と書き込む。

「グァバジュース…おとーちゃんの大好物。

 で、あり、かつ、一般的ではない飲み物」

実際、リョウコは父親以外にグァバジュースを飲んでいるのを見たことがない。

「それが、サンタの好物…

 この書き込みと、さっきのおかーちゃんの『好きなんじゃないかしら?』と合わせて、うちに来るサンタがおとーちゃんであることは間違いない、と思う」

改めて、サンタ組織と書かれた○の中にある『おとーちゃん』の記載にアンダーラインを引く。

「そうすると、新しい謎も出てくる。

 おとーちゃんがサンタなら、なぜ私に会って行かないのか」

溺愛する娘にただプレゼントだけをおいて去るなんて、絶対にありえないことであるのは、リョウコだけでなく友人たちにとっても周知の事実であった。

「と、言うことは、正体を明かせない理由がある、ということか」

言って、『おとーちゃん』の下に、『会えない理由』と追記する。

「考えられる理由としては、サンタとしてのルール、ってことだろうな。

 じゃあ、そのルールってのはどんななんだろう?」

シャーペン頭で額をコツコツとする。

考えこむ時のクセだ。

脳に刺激を送ることで、いい考えが浮かぶような気がして無意識にやってしまう。

「肉親に会ってはいけない…だと、そもそも置いて行くだけでもアウトだし、逆に言えば、だったら担当変えろよ、って話だ。却下」

書いた上から大きく✕をする。

ここで消さないのは、発想したこと、そのものには価値があるからだ。

「だとすると……

 うん、これしか、ないか」

会えない理由、

『正体を知られてはいけない』

「うん……うん?なんか、違うな…」

再びシャーペンで、コンコン。

「ああ、そうか。

 知られてはいけない、なら、なんでおかーちゃんがヒントをくれるような真似をしたのか、が解決できない。

 と、なると、だ」

知られてはいけない、に二重線を引いて消すと、その下に

『バラしてはいけない』と書き、さらに『見破るのはOK』と書き込んだ。

「これだ。しっくりくる」

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