第8話 12/23(祝) 19:00

ぐぅ~


(ああ、もう19時か)

机の前で物語の世界へ旅立っていたリョウコの腹時計が鳴る。

幼少の頃より、ハレカワ家の夕食は必ず19時と決まっており、自動的にこの時間になるとお腹が空くようになっていた。

「さて…ちょっと、聞いてみるか…」

ノートに起こっていたとある変化を胸に、リョウコは立ち上がる。


「リョウコ~、ちょっとお皿出して~」

「はーい」

今日の夕飯は豚の生姜焼きとポテトサラダ。

空腹に、しょうゆの焦げる香りがたまらない。


「ねぇ、おかーちゃん?」

「ん?なぁに~?」

ポテトサラダのおかわりをしながら、意を決して切り出す。

「うちってさー、毎年サンタさん来てくれてるでしょう?」

「ふふふ、リョウコはちゃ~~んと、いい子にしているからね~」

にこにこと母が答える。

(うーん、この反応を見ると、自信なくなってくるけど。

 でも、おかーちゃんがサンタ組織の一員であることは、もう間違いないとみていい、はず。

 もう何年も前からだろうから、こんなことではボロは出さないんだろうけど)

ただ、一つ。

自分の母親がということ、それだけを頼りに、真実への細い糸を手繰り寄せる。

「おかーちゃんさ。

 みんなにこの話をするとさ、サンタは親だよ、っていうんだけどそうなのかな?」

「んー?そうねぇ。

 リョウコはどう思うの?」

「私は……」

慎重に、慎重に。

言葉を選ぶ。

「可能性は、あるのかな、って思う。

 そもそもサンタさん自体が1人だってわけじゃないだろうし、場合によっては委託?って形で親に頼む場合だってあってもいいんじゃないかな」

「うんうん」

「でも、うん、そうだなぁ。

 それは一つの可能性、として、だからってサンタがいない、という話ではないと思うんだ」

「ふふふ、リョウコは、ちゃんとサンタさん信じてるのね」

「そう、だね。

 信じてる。

 疑うよりも、信じるに値する証拠の方が多いし」

「リョウコったら、夢がないわねぇ。

 でも、あなたらしいわね」

そうして、母に頭を撫でられた。


「そうだ、おかーちゃん。

 一つ聞いてもいい?」

「いいわよ~?」

ってさ、グァバジュース、好きだと思う?」

「なぁに、いきなり?

 でも、そうねぇ…きっと好きなんじゃないかしら~?」

「…そっか。

 ありがとっ!」

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