第7話 12/23(祝) 14:00

「ただいまー」

「おかえりなさい、寒かったでしょ?」

「うん、今日は寒かった!

 ちょっと部屋に戻ってるね」

「はいはい、ママは下にいるわー」


トントントン


コートを脱ぎ、コンビニで買ってきた温かいペットボトルを手に階段を上がる。

リョウコの部屋は、2階にあがってすぐ右側。

南側に大きな窓があり、ベランダに通じている。

レースのカーテン越しに、シーツが揺れているのが見える。

外の気温は、昨日よりさらに下回って3℃。

これで天気が崩れれば、雪が降ってもおかしくないレベルだった。

(シーツ、凍ってないだろうな。

 寝る前に、布団乾燥機で温めよう…)


ドサッ


本屋で買ってきた新刊を机の上に投げ出し、部屋着に着替える。

サンタのことも気にはなるが、まずはついつい買いすぎてしまった本を読みたくて仕方がない。

しかし、なぜこうも本屋というやつは誘惑が多いのだろうか。

寂しい懐事情と共に、取捨選択をせざるを得なかったことが悲しかった。

(でも、厳選したから、いいんだ!)

泣く泣く諦めた本に未練はあるが、全て本を買うことはできないから、しょうがない。


着替え終わり、ハロゲンヒーターのスイッチを入れると、半纏+ひざ掛け、と完全装備に身を包む。

椅子に座り、いざ物語の世界へ!

…そう思った瞬間、頭の隅で何かが違和感を訴えていることに気付いた。

(なんだろう、特におかしなことはないはず、なんだけど…。

 でも、この違和感は無視できない……)


一度、椅子から立ち上がり、ドアまで戻る。

部屋を出た時は寝起きでぼーっとしてはいたが、夜中の様子は覚えている。

シーツを剥がされたベッドはともかく、ベッドサイドのぬいぐるみも、長いバナナ形の抱きまくらも問題ない。

家具の位置は…当然動いているわけもなく、タンス…は、畳まれた衣服がしまわれていた。

(おかーちゃん、いつもありがとう)

壁にかかった制服も昨日脱いだままだし、机の上には今日買ってきた本が置いてあるだけ…。


「これだ!」

そう、昨日の夜。

思考整理に使ったノートは、閉じて机の上に置きっぱなしだったはずだ!

それが、何故か片付いてしまっている。

「一体誰が…って、普通に考えたらおかーちゃんしかいなんだけど…」

リョウコの母は、部屋の片付けや掃除をしたり、洗濯物を持ってきてしまってくれたりはするが、机の上のノートなどを触ることは今までに一度もなかった。


『だからね、母親=サンタ、って話じゃなくてね。

 CN《コードネーム》:サンタを構成する組織があったとして、その関係者なんじゃないかな?ってこと』


昨日の帰り道、友人に言われた言葉が脳裏に蘇る。

(まさか、本当におかーちゃんが組織の人間だとして、疑っていることがバレた…???)

視線を巡らせると、すぐにノートは見つかった。

机の上にあるファイルなどを立てているスペースに、そっとしまわれていたのだ。

恐る恐る手に取り、中身を確認する…。

「こ、これは……」

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