第4話 12/22(金) 19:00

「ねぇ、おかーちゃん。

 今年もおとーちゃんは帰ってこれないの?」

母親と2人で食事をとりながら、リョウコは尋ねる。

「そうみたいねぇ。

 『ちょうど撮影が佳境に入ったから、残念だけど…』、って」

母はそう言いながらスマホの画面を見せてくる。

画面にも全く同じ文面が映し出されている。

…わざわざ画面を見せなくても、と、その下に両親のラブラブチャットを見てしまい、そっと顔を背ける。

「おとーちゃんに、いい加減帰ってこないと今度会った時他人のふりするぞ、って送っといて」

「あらあら、そんなこと言ったらパパ寝込んじゃうわね。

 それと、お仕事頑張ってるパパにそんなこと言ってはダメよ?」

「……うん、ごめんなさい。

 なんか、ちょっと寂しくて」

「そうねぇ。ママも、寂しいわ」

優しく頭を撫でてくれる母の手を感じながら、リョウコの頭は別のことを考えていた。



(今まで考えもしなかったけど。

 もし、おかーちゃんがサンタ組織の一員だとしたら、やっぱりおとーちゃんも関係者である可能性は非常に高い、よね。

 幼少期からおとーちゃんがクリスマスにいた記憶が一切ないのも、おかしな話だ。

 小さい頃から、今のお仕事で世界各国を飛び回っているから、ってことで疑問にも思わなかったけど、欧米ってクリスマスって結構大事にしてるんじゃないんだろうか。

 日本とは違って、朝からミサにいって、夜は家族ですごして、ってのが一般的な気がする。

 いわゆる芸能界だから、そんなことお構いなし、なのかもしれないけど。

 考えれば考えるほど、怪しく思えてしまう……)

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