第2話 12/22(金) 15:20
「オーケー、信じる。
少なくとも去年のあんたの部屋ではなにか得体の知れない事が起こって、結果としてプレゼントが置いてあった、ってのは間違いないようだね」
「うん、日程とこの人影からして、サンタ、でいいと思う。
本物かどうかはわかんないけど…コードネーム:サンタ、って感じ?」
「いいね、コードネーム!かっこいい!」
なんだかんだで女子高生。
みな、こういうノリは嫌いじゃない。
「あ、一つだけ訂正。
去年、だけじゃなく、これでもう5年目。
実際には、おかしい、って気付いてから5年だから、もっと前からの可能性はあるけど」
5年前、というと、11歳――小学校5年生の頃。
その頃には、ほとんどの子がサンタを信じなくなっている頃。
「おかしい、って気付いたきっかけは、サンタがいない、ってある男の子に言われたからなんだけど」
「ん?どういうこと?」
サンタがいない言われたら、サンタが来た、というのはどんなトンチなのだろうか。
「CN《コード・ネーム》サンタが現れるには、いくつか条件がある、って思うんだよ。
で、その一つが『サンタを信じていること』」
ぴ、っと人差し指を立ててリョウコが言う。
「周りのみんながね、
『サンタはいない、両親がプレゼント置いてる』
っていうから、そんなことはない!絶対にいる!!って強く信じたの。
おそらく、それまでにないレベルの強い思いでね」
どこか遠くを見るような、過去を懐かしむように言う。
「その夜、サンタがいるなら会いたい、って思って、手紙まで書いて。
おかーちゃんにも、
『サンタはいるよね!おかーちゃんじゃないよね!?』
って聞いたりもしてた」
「母親はなんて?」
「ん。
『あなたが信じていたらいるし、信じなければいないのよ』って」
「ふむ…」
友人の1人が考え込む仕草をする。
何かがひっかかったようだった。
「結局ね、サンタに会うどころか、いつの間にか寝てしまっていて。
でも、朝起きた時に、さっきのメッセージカードみたく手紙の返事が書いてあって。
当時もおとーちゃんは日本にいなかったし、おかーちゃんに聞いても知らないっていうから、信じていれば来るんだ、って」
「それって、やっぱりあなたの母親なんじゃなくて?
知らない、って言われたから、って鵜呑みにしすぎでは?」
「でも、小学校5年生で、変な話、ばらしたっていいくらいの年齢なのに、 敢えてそこまでして、私にサンタを信じさせる必要はあるのかな?」
「一理、ありますわね…」
「で」
一旦話を区切り、立てたままでいた人差し指の横に、中指を立て“2“を表しつつ続ける。
「条件の2つ目が『いい子でいること』」
「や、そんなの、子供に言うこと聞かせるための方便だろ?」
『いい子でいないとサンタさん来ないわよ?』
というのは、ある意味常套句だ。
その一言によって、冬の期間、子どもたちは素直になる。
早く寝るし、お手伝いはするし。
母親(父親)が使う定番の”ウソ“の一つだ。
「うん、確かに普通はそうだと思う。
けどね、そもそもなんでそう言う『常套句』が生まれたか、って話。
本当にサンタの出現条件の一つだったって、ことなんじゃないの?」
「と、言われてもなぁ」
さすがに根拠に乏しい、と友人達は納得してくれない。
「一応、5年間いろいろ検証してみた結果なのよ。
正確な採点方式は不明だけど、それぞれの“良い行い”に対してポイントがついていると思われるわ。
一回だけ、返事が『来年はもっといい子でいてね。頑張ってるから、特別におまけ』って書かれていたことがあってね。
ちょうど受験の時で、精神的な余裕がなかったから、ポイントがギリギリだったんだと」
「もっと、ね。
もし、そのポイント制が本当だとして、どうやって測定してるんだろう」
今まで黙って聞いていた1人が、口を開く。
「そこまでは、なんとも。
何か特殊な方法で測定しているんじゃないか、ってくらいしか…」
「一気に胡散臭くなったな」
「残念ながら、そんな気がする、以上の回答を持ち合わせないんだ」
「ま、そうなるわな。
とはいえ、うーん、なるほど。その書き方は気になるね」
「うん、すごく引っかかる。
『ポイントが足りないけど、別で頑張ってるから今回だけサービスだよ』
っていう感じ。
そんなわけで、私はできるだけ一日一善を貫いている」
「ああ、リョウコのアレはそういう理由だったのか」
「うん。
まぁ、5年続けてたら体が自然に動くようになったけど」
リョウコの善行は誰もが知っていた。
押し付けがましくなく、絶妙のタイミングで差し出される救いの手には、校内の、ひいては町内の誰もが一度は救われているのではないだろうかと思えるほどである。
「でもよ。
サンタを捕まえよう、なんてのは悪行に入らないのか?」
「そこは、大丈夫みたい。
サンタさんに会いたい!って、だけ聞けば純粋な願いにしかならないでしょう?」
「確かにそうだな」
「あとは、恐らくそう簡単に捕まらない自信があるんだと思う。
カメラに映らないことといい、何かしらのオーバーテクノロジーがあってもおかしくないと思うし」
「どうせ捕まらないし、会いたいって思い自体は悪いことではないから、放置しとこう、っといった所か」
「おそらくは」
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