第5話
「はい、生贄ですね」
そう言うとアユミは、玉露を美味そうに飲んだ。
斎木爺は、何も言わずに次の言葉を待っている。
「まあ、正確には使い捨てでは無い中々使い出のある生贄ですね。安物や紛い物では、直ぐに駄目になります。因みに日本には、私達以外にも苗字が無い方々がいらっしゃいますが、アノ一族は見える形の生贄?ですかねー?」
とアユミは、一気に言う。
「見える形?」
と俺が言う。
「ハイ、日本の神様って実は、全部祟り神でお参りに行くのは、「自分には祟りが有りませんように」ってお願いしに行っているのが本当の意味なんですとうちのオババに聞きました。だからアノ一族の方々を祀るのは、「災厄が日本に降り掛かりません様に」と言う意味なんですよ」
一気にそう言うとアユミは、「ふぅっ」と溜息をつく。
アユミの話を聞いた斎木爺が
「そういえば、稲荷神社にお祈りして願いを叶えて貰うと代わりに一生『稲荷の言い成り』にならなければならない。と言われています。ある意味これは、祟りですなぁ」
そんな二人の会話を聞いて遣る瀬無い気持ちになって懐から出したタバコに火を着けた。
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