第4話
タクシーが、小田急線の各停しか止まらない駅近くの古いビルの前に停まった。
ビルの横が階段で入り口には赤い鳥居がありビルの屋上に小さなお稲荷様が鎮座している。
【神社の楡の木は生贄を吊す場所(鳥居)】
タクシーから降りたアユミは、4階建てのビルを見上げて
「はーぁ、変わった構造のビルですね。屋上に稲荷神社が有るのですか?」
「ああ、元は小山の上に稲荷神社が有ったのだけれど、俺が神社を継ぐ時に小山を削ってこのビルを建てて元々稲荷神社が有った場合が屋上と同じ高さだったんで屋上に社を設立したんだよ。横の鳥居がある非常階段からも上がれるが、中のエレベーターを普通は使って皆お参りしている」
「良いんですか?山を削ってビルなんて、バチとか当たりません?」
「大丈夫、土地を有効利用して家賃収入で暮らすのと、時々コンサルタントと言うかトラブルバスター見たいな不定期収入をボーナスにしてるから何とか生きていけるんだよ。稲荷神社だけじゃ今時、食って行けない。まあ、宗教法人なんで税金はかなり免除されてるけどね」
「と、言うと旦那様は神主さんなんですね?私達は、財団法人を設立して頂いたお
熱く語り始めたアユミの話しを切り上げる為に俺は、アユミの手からキャリーバッグの持ち手を奪って
「こんな所で、立ち話ししていると一階のコンビニの営業妨害になるから上に行くぞ」
と言いコンビニと学習塾のテナントに挟まれたエレベーターホールへ続くドアに手を掛けた。
アユミは革製の鞄に入れた募金箱を肩紐で斜めに担いでキョロキョロと周りを見回しなが着いてくる。
エレベーターのRボタンを押して屋上に。
屋上のエレベーター用の四角い箱の様な建物を出ると正面に稲荷神社の社殿が有り左右に社務所がある。
社務所脇にある家の引戸を開けてアユミを招き入れ奥に向かって「おゝい、帰ったぞ!」と声を掛けた。
ドタバタと足音がして紫色の袴を履いた白髪の爺さんがやって来る。
「坊!コンサルとか言う名の仕事はどうでしたか?つっと?後ろのお嬢さんは一体・・・」
「
「貰った?募金のオマケに?一体幾ら入れたんですか?坊は?」
俺は指を三本立てて靴を脱いで自室へ行く。
後ろではアユミに募金の桁を聞いたのだろう斎木爺の「300万!!」と言う叫びが聞こえた。
自室で紺色で紋の入った袴と足袋、上を白い装束に着替えて居間に向かう。
襖を開けるとアユミが正座して下座に座り客用に出す玉露をのんでニコニコしてる。
斎木爺は巫女装束を庫裏に取りに行ったのか姿が見え無い。
「旦那様は本当に神主さんだったんですね」
アユミは掌で湯呑みを包み暖をとりながら言う。
この和室の居間は少し寒いなと思い火鉢に炭を足し水の入った鉄瓶を置いた。
鉄瓶の湯が沸けば多少は暖かくなるだろう。
「悪いな、昔の古い家を移築してるんで隙間風が多くて。奥の部屋は改装してエアコンもあるから安心して使ってくれ」
「旦那様、私供は本来野宿をしたり街角で物乞いをするので寒さや暑さに強いから御心配無く」
そんな物かと思っていると襖が開き斎木爺が巫女装束を持って現れた。
「坊!年末年始のアルバイト巫女用の装束を持って来ましたぞ。この娘さん新しい巫女さんにするのですかの?」
「うん、本人やこの娘の身内は俺の子供を産ませて次代の持衰にしたいそうだよ。しかし、ただ置いておくのも勿体ないから巫女の真似事でもして貰ってと思ってな」
「子を産む?持衰・・・ですと?坊も又、厄介な者を連れて来ましたのぉ。やはり亡くなった奥様の血筋が成すものですか・・・」
巫女装束をアユミに渡しながら斎木爺が呟く。
湯呑みを両手で包みながらアユミが
「旦那様、此方の方はどの様なお方ですか?持衰と聞いても直ぐに理解なさっている見たいですが・・・」
「ああ、代々、うちの神社の
斎木爺を見るとコクコクと頷いている。
湯呑みを置き居住まいを正したアユミは
「改めまして、第6代アユミでございます。旦那様、斎木様。私の様な苗字の無い者を受け入れて頂きありがとうございます。身を粉にして旦那様に使えさして頂きますのでよろしくおねがい致します」
「第6代アユミ・・・苗字が無いと言っていたが、君達と言うか、持衰と言うのは生贄なのかい?やっぱり」
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