第2話

老婆は、隣に居る私に向き直り

「恐れ入りました旦那様、今時知る者も無い持衰と言う呼名と金撒きをご存知とは恐れ入りました。つきましては、そこにいるアユミを旦那様の所有としますのでどうか可愛がってやって下さいませ。旦那様の身の回りの世話をさせますし。食い扶持は自分で稼ぎますので屋根を貸して貰い夜にお情けを頂き子を成して貰いたいのですが・・・」

何?所有?お情け?

テーブルの横にいるアユミと呼ばれた娘は恥ずかしそうにモジモジしている。

「旦那様、このアユミの箱で食い扶持を稼ぎますのでご安心くださいませ!代々受け継がれる募金箱とアユミの名が有れば食いっぱぐれは有りません!」

募金箱をグッと突き出す。

確かに募金箱には【アユミの箱】と書かれている。

ん?アユミの箱?時折店のレジ横に置かれている小さな募金箱もアユミの箱では?

「お気付きになりましたか?旦那様。全国にあるアユミの箱の総元締めはこの募金箱です。私は6代目アユミで御座います。そして旦那様の子を成しそこにいる頭、私の大婆様が亡くなった後に次の頭を継ぎます。旦那様の子が女の子なら次のアユミに男の子なら次代の持衰として大切に育てていきますので御安心下さいませ」

と深々と頭わさげた。

話しが唐突過ぎで解らないが・・・

目の前に置かれたコーヒーを半分程を飲みカップをソーサに戻し一息ついて口を開く。

「このコーヒー美味しいね。こんなに美味しいのにこの店お客さんが居ないのが不思議だ。わざと流行らせて無いの?流行らせたいなら相談にのるよ?持衰じゃあ無いけれども俺の仕事は色々なトラブルを解決するコンサルタントなんだよ。まあ、解決と言っても交渉事の場に居るだけで何故かトラブルが解決してお金を貰うだけなんだけれどもね。だからなんだろうけれども俺の彼女になった女は皆、俺と一緒に住むと勝手に金を置いて居なくなるんだ。それでも良いなら」

頭と呼ばれる老婆とアユミと名乗る女の子は顔を見合わせ頷き合う。

「私共は漂泊の民。戸籍も苗字も御座いません。この娘を旦那様の所有物としてお側に置いて下さいませ・・・それで充分で御座います」

老婆が深々と頭を下げて言う。

「戸籍が無い?何なら作る事も可能だけど?」

「いえ、仮の戸籍なら御座います。あくまでも仮で御座いますがね。まあ、詳しくは追々。この店もわざと人払いの呪いが掛けて有ります。乞食の連絡場として目立たぬように。アユミ、旦那様に付いて行くのに必要な荷物を質屋から引き上げておいで」

老婆の言葉にアユミは頷き募金箱をカウンターに置いて店を出て行く。

アユミが出て行った後、老婆は

「旦那様は、もしやさいの一族では?」

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