残像ー3-1
イ「おらあっ!」
男「ぐっ!」
イ(くそっ、人数が多い……でも!)
(音・銃声)
イ「いけるっ!」
男「うぅ、ぐわっ!」
イ(表に出て来た分は片付けた!
残りはあと何人? 人質は?)
グ「ふん、素人のくせに無理しやがって
パン屋はおとなしく小麦でも捏ねてればいいのによ」
ク「男には戦うべき時があるんだよ
お前の親父にもよくそう叱られたもんだ」
グ「これがお前の戦い方ってやつなのか」
ク「ああ 恥ずかしながら、な」
(音・ナイフ)
グ「なら、俺も本気でやらなきゃなんねえよなあ?」
ク「……望むところだぜ」
イ(グロキアさんが持ってるのは……斧、それも何本も?
いつもあんなのを携帯していたなんて、知らなかった)
イ(それに、いつも機嫌がよかったパン屋の人が
ライフルを持って副班長の前に立ち塞がるなんて)
イ(悪い夢……じゃないんだよな、これ)
イ(よくわかんないけど、とにかくテロ集団を制圧しなきゃ
これ以上犠牲者が出る前に!)
(音・ナイフ)
男「ぐあぁぁ!」
男「ぎゃああああ!」
ク「おいおい、斧を投げるなんて原始時代じゃねえんだぞ?」
グ「よく言うぜ、これから切り刻まれる獲物の分際で」
ク(動いた、来る!)
(音・銃声)
グ「はは、目が衰えたんじゃねえのか?
全部逸れちまってるぜ!」
ク「ふんっ!」
(音・銃声、ガラス)
グ「どんなに高性能な銃だろうと、当たらなきゃ意味ねえんだ」
(音・破壊)
グ「そして、重量は嘘をつかない
この手で振り回せば確実に全てを壊せる」
ク(くそっ、武器なしでタイマンはまずい!)
ク「援ご……!」
グ「遅えよ」
(音・打撃)
ク「ぐ……げほ……」
グ「主犯格には洗いざらい吐いてもらう役目が残ってるからな
悪魔より性格悪い拷問官のところに送ってやる」
グ「さて、じゃあ後片付けといくか
おい、生き残りたい奴は両手を開いて伏せろオラァ!」
イ(よかった、パン屋の人は無事に確保できた)
グ「あん? 新人、何をぼーっと突っ立ってる
てめーも早く鎮圧に回って……」
(音・撃鉄)
グ「っ! おい、まさか」
ク「悪いな……」
マ「えっ」
イ「マクロンさんっ!」
(音・銃声)
(音・物音)
フ「ぐ、いってぇぇぇぇっ!」
マ「フェゼ……さん?」
フ「あ、これダメなやつだ……悪りぃ、返事する余裕ねえ」
マ「は、早く救護を!」
ク「これは……驚いたぜ」
グ「ああ、全くだぜ こんな滅茶苦茶、通じるかっての
じゃねーよ、何やってんだお前」
ク「はっ、けじめをつけようと思ったんだが
どうやら神は俺に、罪を償えと言っているらしい」
グ「ちげぇな、そりゃお前の気のせいだ
人様に迷惑かけるのも大概にしとけってことだよ」
グ「さ、てめえは拷問官送りだ、さっさとお縄につけ
きっと生まれたことすら後悔することになるぜ」
ク「なあグロキア、あの人質の娘とはどういう関係だ?
お前が現れた瞬間、顔が若干緩んで……いや、蕩けてたぜ」
グ「んだよ、嫉妬か?」
ク「ちげーよ、馬鹿」
グ「……ああ、似てるさ 13年前のあいつにな
生き返ったのかと思ったくらいだ」
グ「似すぎて困るくらいだぜ、どうも調子を狂わされる
自分がなんのためにここにいるのか、忘れるくらいにな」
ク「お前、まさか」
グ「今のは失言だ、忘れろ」
ク「ふん、そうかよ 合点がいったぜ」
イ「テロリストは全員制圧しました
死者はゼロ、人質も全員無事です!」
ク「ああ、チビっ子か
あいつにも悪いことしたなあ」
イ「……」
ク「よお、無様な姿で悪いな」
(音・打撃)
ク「っで、なにすんだ!」
イ「食物は人を作る
それを作る人間は、一種の神なのかもしれない」
イ「……パンに毒を混ぜるなんて、許せない」
ク「……あー、あれ腐ってたのか」
ク「昨日の売れ残りだし、自分で処理しようと思ってたんだが
どうにも喉を通らなくて、な」
ク「パンも喜んでるぜ、嬢ちゃんの胃の中で
ありがとな、俺の最後の作品を食べてくれて」
イ「……どういたしまして」
グ「んで? 人質は無事なのか?」
マ「全員、酷くても軽傷程度だと思われます」
グ「そいつはよかったぜ、俺の首はまだ体とお別れしないで済むらしい
さて、残りの尋問対象を手早く拘束するとしようか」
グ「おいおいぼさっとしてんな、帰るの遅くなるだけだぜ
俺は疲れてんだ、久々の実戦だからな」
フ「いや、おかしくない……?
俺、重症じゃねえのかよ」
グ「いや、左肩に小さい穴空いてるだけだぜ
お前が普段使ってる弾の半分もない」
グ「ま、正直見直したぜ、ビビりのチビ野郎だが
底抜けの腐れチキンではなかったみたいだな」
フ「身に余るお言葉だぁ……副班長様
これでも、お前より長くここにいるからな……」
フ「あぁ! 無理だ、かっこつける余裕ねえよ!
早く救護班呼んでくれっ!」
グ「それならいい方法があるぜ、よっこらせっと」
フ「待て待て待て! 腕つかむなって
関節が引っ張られて痛えんだよ!」
グ「これからその痛みが、天にも登る気分に早変わりするぜ」
フ「お前、まさか」
グ「ああ、ちょっと肩を足でグリグリするだけだ」
フ「うぎゃあああ、う、あぁぁぁぁぁ!」
フ「……」
グ「静かになった、効果絶大じゃねえのよ
さすが拷問官のお墨付きだぜ、まったく怖い怖い」
マ「妹に受けた技を、兄に意趣返しですか……」
グ「救済だよ、辛そうな仲間を放っておけないだろ?
少なくとも俺はあいつにそう言い訳された」
グ「それに、妹を躾けるのもあいつの仕事だろ?
責任は負わなきゃなあ」
イ(ふぅ……)
イ(なんとか、悲劇にならずに済んだ……のかなあ)
イ(それにしても……パン屋の人、クレールさんだっけ
特におかしい様子はなかった)
イ(銃を握ってる最中も、グロキアさんと話してる時も
いつものままだった)
イ(それなのになんでこんな事件を……
12年前の事件って一体なんなんだろう……)
イ(この光の街の裏側に、一体どれだけの真実が隠されてるんだ……?)
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