狩人

グ「よう」

ネ「げぇっ……」

グ「んだよ、不服か? 俺もだよバーカ

  なんでお前らのお守りのために休暇潰さなきゃなんねえんだか」

グ「俺が今日お前らに指示を出す

  余計なことすんじゃねえぞ、面倒ごとを起こしたら殺す」

イ&ネ「……」

グ「ふん、そうやって良い子でいる限りは何もしねえよ

  黙って従ってりゃいいんだ」


グ「じゃ手続きのとき渡された書類と地図開け

  そこにお前らが見回るべき区域と周囲の隊員の位置が書かれてる」

グ「基本はその区域内ぐるぐる回っとけ

  んで、異常に気づいたら臨機応変に反応しろ」

グ「何をするか迷ったらとりあえず他の奴らに助けを求めろ

  自分一人で処理してもいいが、緊急なら発煙筒だけは焚いとけ」

グ「まあ今日はつまんねえことに三人一組

  しかも人がいやしない北部だ、問題なんて起こんねえだろうよ」

グ「そもそも事件に遭遇することなんざ一週間に一回程度

  被染者なんざ半年に一回見りゃいい方だ」

グ「この街じゃ光の射さない場所の方が珍しい

  誰もそんなとこ好んで行きゃしねえからな」

グ「まあせいぜい」


グ「とまあ業務上言うべきことはこれくらいだが

  こっから話すことは雑談だと思ってくれ」

グ「まずは、そっちの猿だ

  お前、剣術の大会で準優勝したんだっけか?」

ネ「そうですね、二年前の話ですけど」

グ「銃の扱いはそれなりだって白髪から聞いた

  特に見るものはねえってな」

グ「まあ非火武器は用途も多いし、音が出ない利点もある

  大事な時にどっちを使うか迷わないようにだけ気をつけとけ」

ネ「……」

グ「俺がてめえの身を心配するのが不自然だと思ったか?」

グ「だとしたら安心しやがれ、俺は自分の仕事を減らしたいだけだ

  人の親切はありがたく受け取っとけ」

グ「次にそっちのちっこいの

  お前は……入隊試験の時に見てから気になってたんだが」

グ「単刀直入に言う、お前は危険だ」

イ「?」

グ「障害物競争……直接手足を捥ぎにかかるようなトラップのなかを

  あそこまで余裕を持って通過したのを見たのはおまえが初めてだ」

グ「反射神経、危険察知の両方がトップクラス

  加えて力の抜きどころもわかってる、試験者の中では別格だ」

グ「だが、そんなことはおまけだ

  語るにも値しない」

グ「おまえ、自分から闇の中に突っ込んでいっただろ」

イ「……」

グ「なんでだ? あの時おまえにはそうする理由も必要もなかったはずだ」

イ「そっちの方が速そうだったから、です」

グ「おいおい、闇の中は危険だから入るなって

  ママに習わなかったのか?」

イ「……習ってないです」

イ「その代わり標的がいるなら闇の中だろうと突っ込んで行け、って」

グ「……そうかよ」

グ「まあ外部上がりで闇夜に自信があるのかもしれねえが

  危険があるところに飛び込んでいくのは馬鹿のやることだ」

グ「面倒は起こしてくれるなよ、イーリ」

イ「了解しました」

グ「じゃ、とりあえず今のアドバイスを参考にして

  この辺りを巡回してこい」

グ「今日は何か事件に遭遇したら俺を呼べ

  自己判断は禁止、絶対だ」

イ「行ってきます」

ネ「……行ってきます」


グ「掴めねえやつだなあ、特性も、性格も」

グ「……邪魔にならなきゃいいけどな」

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