実習訓練

キ「それじゃ実習を始めようか、二人とも」

イ&ネ「よろしくお願いします!」

キ「ははは、まあ私じゃ頼りないかもしれないが

  なあに、そうそう事件になんて遭遇するもんじゃない」

キ「とりあえず巡回任務の流れだけ覚えていてくれればいいさ」

ネ「まずは任務開始のサインと手帳の確認、ですね」

キ「携行品が故障してないかの点検もやっておくようにね」

イ「拳銃、発煙筒、治療セット、簡易照明……あと水筒」

ネ「水筒は別にいいんじゃ……」

キ「まあ水漏れすると大変だからね

  じゃあ、出発しようか」


(音・暗転)


キ「巡回の基本は夜だ、必然的にシフトも多く組まれてる

  陽が落ちると暗化現象が起こりやすいからね」

キ「まあ昼でも起こらないとは言いきれないし

  事件事故の救助活動もしなきゃいけないから気は抜かないで」

イ「ここは、どこなんですか?

  リクタリアに林がある……?」

ネ「ここは北部の学術区域だよ

  研究や農耕のための平地が広がってる」

ネ「もっと奥に行くと国境の山に辿り着くらしいよ

  一般人は進入禁止なんだけどね」

キ「このあたりは農作物のために明かりが抑えられてるところが多いし

  照明を忘れずに点け、注意深く見回りすること」


(音・暗転)


ネ「西部、主要部近辺

  役所とか議事堂、それに企業の事務所が多いね」

イ「煌びやかではないけど、すっごく眩しい」

キ「このあたりは特に警戒する必要もないかもね

  まあ疲れている人が多いから、トラブルは避けるように」

ネ「人通りも多いし、スリなんかも起こりやすそうですよね」

キ「そうだねえ、人が集まるとそうなってしまうのは

  定めだとはいえ悲しいことだよ」


(音・暗転)


ネ「東部・住宅街と商店街

  学校なんかもあるし、都民の大半はここに住んでるんじゃない?」

キ「衆都と郊外をつなぐ唯一の関門もあるし

  何より人が多くて広大だ」

キ「ここも注視すべきスポットの一つだね

  被害も拡大しやすいから迅速な行動が求められる」

イ「カレーの匂いだ、夕食の時間かな」

ネ「飯の話は寮に帰ってからにしろよ

  余計に腹が減る」

イ「う〜ん、血の生臭さが足りないから

  なんか落ち着かない」

ネ「……一瞬で食欲が失せた」


(音・暗転)


イ「うわあ、スラム街だ」

ネ「あんまり近寄りたくはないけど

  仕事だもんなあ……」

キ「説明する必要もないと思うが、もちろん最重要地区だ

  南部は昔からろくでなしの溜まり場だったからな」

キ「まあ一箇所に集まってくれてる分

  対応がしやすいと思うしかない」

キ「反社会勢力が集結して、厄介な計画を立てなければいいのだが

  今のところはそういう報告はないけど……」

ネ「安心はできないですよね」

イ(働かざるもの食うべからず、が自然の掟なのにね

  さすが理想郷、ってところか)


(音・暗転)


キ「さて、ここが最後かな

  ご存知光都警備隊の本所、そして中央舞踏場だ」

ネ「まあリクタリア、ルクヴィルドといえばここ、だろうな」

イ「挿絵や写真で何回も見たことあります」

キ「まあそれだけ重要な意味をもつ場所ってことだよ

  発現率は低いだろうけど、気を引き締めて任務に当たるようにね」

キ「というわけで、今日の任務はこれで終わり!

  長い距離歩かせてごめんね」

キ「次回からは任務開始の受付のとき、担当区域を告げられるから

  とりあえずそこに移動して、あとは先輩たちの指示に従ってくれ」

キ「じゃ、受付に報告書を出したら自由解散ね」


イ「ふー、今日はいろんな場所を見に行けたし、満足満足!

  まあ楽しみを一日で潰しちゃった感はあるけどね」

ネ「まだ見所はいっぱいあるさ、明日からも頑張ろう」

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