初陣

イ「もしかして、今日、私一人……?」

イ「……」

イ(今までずっと指示を聞くばっかだから

  何していいかよくわかんないや)

イ(とりあえず、昨日と同じようにぼおっとしてよ)


イ(西部は今日も平和だなあ

  小さな子供から大きなのまでいっぱいだ……私もだけどさ)

イ(この街で育ってたとしたら、私はどんな風になってたんだろう

  あの塀の向こう側はどうなってるんだろう、なんて思えたのかな)

イ(違和感を感じずに、生きていけたのかな……)

イ「と、ここどこだろ

  この街の中なのに、なんか薄暗いなあ」

イ「!」

A「……」


A「……」

イ「なに、ですか

  悪いけど仕事中なんで、話し相手にはなれないですよ」

A「うぁぁぁぁぁ!」

イ(これが……被染者か、初めて見た)


選択肢

1.助けを呼ぶ

2.一人で向かう


1.

イ(初実戦が単独行動ってのは危険すぎる……

  未知の相手に迂闊に手を出せば、狩られるのはこっち)

(音・投擲、破裂)

イ(簡易照明を起動し、発煙筒を投げて……

  無理をしない範囲で、救援が来るまでこの場を凌ぐ!)

A「ぐおおおぉぉぉぉぉ!」


Bランク以上

(音・ナイフ)

イ「あっ」

(音・ドサッ)

イ(参ったな……)

イ(まさか、一人で片付いちゃうなんて……)

フ「おい、イーリ! 無事か!?」

イ「あ、フェゼさん……ちょうど終わったところですよ」

フ「終わった……?」

イ「被染者と遭遇しちゃって、まだ入隊して間もないですし

  増援を待とうと発煙筒を焚いたんですけど……」

フ「俺が来る前にやっちゃった、と」

イ「すいません……大事にしちゃって」

フ「いや、謝らなくてもいいんだけどさ

  仕事がなくなったわけだし」

フ「それにしても、本当にたくましいんだな、イーリって

  俺なんかよりずっと強いじゃんか」

イ「まあせっかくこの街に来たんですしね

  すぐ死んじゃったらもったいない」

フ「ほんっと、たくましい奴だぜ」

フ「ま、処理班が来るまでゆっくりしようぜ

  すぐに現場検証が始まるだろうよ」

フ「被染者とはいえ、地に伏せたままってのもあんまりだしな」

イ「そうですね……」



Cランク以下

イ「くっ……」

(音・金属音)

イ(押されてる……街に逃してはいけないってだけで

  ここまで行動が制限されるのか!)

イ「くっ……そ!」

A「うぉぉぉぉ!」

(音・銃声)

イ「!?」

フ「よう、遅くなってすまねえ」

イ「フェゼさん……来てくれたんですか」

フ「お前の焚いた発煙筒のおかげで、すぐに駆けつけられた

  簡易光源で自分の身も守ってるし、完璧だぜ」

イ「すみません……本当は一人で対処すべきなのに」

フ「いや、この状況は事故っていうか、なんていうかな」

フ「本当は俺と一緒に行動するはずだったんだが

  何かの手違いで単独での巡回扱いになってたらしい」

イ「えぇ……」

イ「まあ無傷で済んだから別にいいですけど

  一人でやっていけるって自信にもなりましたし」

フ「とにかく、本当に大事にならないでよかったぜ」

フ「さて、処理班が来るまでここで待ってようか

  それにしてもよく生きててくれた、きっと今夜はご馳走だぜ」

イ「え、ほんとですか?」

フ「ああ、イーリの活躍のおかげでな」

イ「やったあ!」



2.

イ(増援を待つ間に被害が拡大したらどうする!

  大丈夫、もっと大きくて凶暴な奴らと遊んできたんだ)

イ「ああ、話し相手じゃなく殺しの相手、か」

イ「それなら自信あるんだ、あいにく」


Bランク以上

(音・ナイフ)

イ「ま、こんなもんか、凶暴化したってまだガキだしね」

イ「悪いね、来世なんて奴があるなら

  その時はまあ気楽に暮らしなよ」

イ「こそこそと煙草吸わなくてもいいように、ね」


フ「イーリ、こんなとこにいたのか!

  なんでこんな物陰、お前まで暗化現象を起こすぞ!」

イ「大丈夫、全然ヘーキ」

フ「返り血っつーことは、やりあったってことか」

イ「なんとかなりました」

フ「にしても、そんなとこで戦う必要ないだろ」

フ「……狩人は闇の中でこそ輝く、風の噂には聞いてた

  洒落やジョークの類だと思ってたけど、マジ?」

イ「マジ、ですよ多分」

イ「でもそろそろまずい時間かもしれないです

  続きは街灯の下に移動してから、お願いします」

フ「ふーん、格好つけじゃなく、経験に基づいた判断か

  やっぱり狩猟民族ってのはおっそろしいねえ」



Cランク以下

フ「おーい! イーリ!

  どこ行った〜!」

フ「ったく、配置ミスで新人を一人にするなんてありえねえだろ!」

(音・悲鳴)

フ「っ……!

  まずい予感がする!」


(音・銃声)

フ「こんなところに被染者……しかも、既に血を被ってた

  民間人への被害は……イーリは」

フ「足跡と血痕は、路地の方に続いてる

  ああ……見たくねえな、畜生が」


フ「はあ……参ったねこりゃ、ははは

  こんなのってありかよ……くそが」

フ「なあ……返事してくれよ……」

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