入隊式

ヴ「それでは、ただいまから第45回入隊式を始める」

キ「一同、礼!」


ヴ「ルクヴィルド衆都リクタリア、光都警備隊隊長

  ヴァイツェ・ロッド・アインバニアだ」

ヴ「新人諸君、ようこそ光都警備隊へ

  隊長として入隊を歓迎する」

ヴ「諸君は今、いろいろな思いを抱えているだろう

  期待、不安、野望、そして諦観」

ヴ「それらが実を結ぶこと

  諸君らが良い結末を迎えられることを心から願っている」

ヴ「キース、例のものを」

キ「……」

(音)

ヴ「光都警備隊の隊員手帳だ」

ヴ「それを所持している間のみ

  諸君らは警備隊員であることを認められる」

ヴ「決してそれを携帯せずに任務に従事しないことだ

  もし違反すれば厳重処分を下すことになるからな」


ヴ「さて、任務の説明に入らせてもらう

  いまさらなことだと思うだろうが、耳に通しておいてくれ」

ヴ「光都警備隊の最大にして、最重要の任務は

  暗化現象による被害の拡大を防ぐことだ」

ヴ「暗化現象、もとい闇の呪いとは周知の通り

  光の届かない場所で起こる超常的な精神汚染のことだ」

ヴ「暗化現象を発現した被染者は著しく知性が下がり

  凶暴性を示すようになる」

ヴ「その真相、詳しいメカニズムは今も解明されていないが」

  諸君らはそんなことを気にする必要はない」

ヴ「知っておくべきことは二つだけ」

ヴ「彼らはもう二度と元には戻らない

  そして、彼らは排除すべき対象だということ」


ヴ「いろいろ思うところがあると思う

  それを咎める気も無い」

ヴ「だが、この世界は

  迷いを抱えた弱者が生き残れるほど甘くは無い」

ヴ「強くなれ、悩むのはその後だ」

ヴ「諸君らの健闘を祈る、以上」


(足音)

ヴ「……」

イ&ネ「?」

ヴ「これは隊長としてではなく

  私個人としての言葉だが……」

ヴ「絶対に私を裏切るような真似はするなよ

  地獄より悲惨な世界を見たくないならな」

(足音)


ネ「……」

イ(いったいどんな世界なんだろうね

  ……見てみたいかも)

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