歓迎式

キ「それではみなさん、グラスを持って

  新人のこれからに期待を込めて」


「プロースト!」


イ「……」

フ「あのー、もしもし?」

イ「?」

フ「いや、首傾げたいのは俺なんだけど……」

イ「……」

フ「……」


ケ「何やってんの、あんたら」

イ「!?」

フ「俺が聞きてえよ、そんなこと

  何もしてないのに新人にガンつけられるとか冗談じゃねえ」

フ「喧嘩売ってんのかと思って様子見てたら

  何言っても反応しやがらないし」

ケ「いっつも部屋の隅でナメクジみたいに飲んでるおまえが

  後輩をナンパしてるだなんて、微塵も思っちゃねえよ」

ケ「んで、イーリ? だっけ?

  こんな奴に何で絡んでるわけ?」

イ「ケティ……さん? 本物ですか?」

ケ「そうよ、残念でした」

ケ「その様子を見ると私とこれを間違えたみたいね

  迷惑な話だわ」

イ「まさか……クローン?」

ケ「あんなナメクジと一緒にすんな

  兄妹ってだけでも嫌なのに」

ケ「これは私の兄のフェゼよ

  蛆虫とでも呼んであげてね」

フ「……何だよ、じっと見つめてきて」

イ「……兄?」

フ「そうだよ、文句あるかよ」

フ「身長同じくらいだし、顔に覇気がないって言われるし

  腕相撲したら毎回負けるけど」

ケ「遺伝子って時に残酷な悪戯を残すものよね」

イ「うわぁ……」

フ「え、何その反応?」



ネ「……話ってなんですか」

グ「お、口の利き方を学んできたみてえだな

  猿にしちゃ上出来だぜ」

ネ「……」

グ「安心しろ、俺はここでお前をどうとかする気はねえよ

  気に食わねえけど、俺だって馬鹿じゃねえ」

ネ「?」

グ「お前も見ただろ、隊長様のことだよ」

グ「あの見目麗しい鬼神様がいる限りは、じっとしておくほかねえ

  鎖に繋がれた犬みてえにな」

グ「まあそういうこった、畜生が」

グ「俺はお前が変な動きをしない限り

  お前を不当に扱ったりしない」

グ「だから、絶対にあの人には逆らうな

  俺まで巻き込まれちゃたまらねえから」

ネ「……」

グ「んだよ、その顔」

ネ「……グロキアさんもそんなこと考えられるんですね」

グ「皮肉かよ、気に入らねえな」

グ「俺にだって使命って奴があんだよ

  そのためなら後輩にだって頭下げてやる」

ネ「マクロンさんのことですか?」

グ「はぁ? 全然違えっての

  あんなガキに熱上げんのは犯罪者だけだろ」

マ「……」

グ「げ」

マ「あれぇ? おかしいですねぇ?

  つい昨日セクハラしてたのは誰でしたっけぇ?」

グ「いや、違うから

  話の流れってやつがあんだろ?」

マ「健気に秘書としての仕事を果たしてる後輩を誑かしておいて

  おまけにガキ扱いとは……ケダモノめ」

グ「おおっと、なんか可愛い後輩ちゃんに貢ぎたい気分だぜ

  新しくできたハンドガレット屋でもなあ」

マ「……」

グ「やっぱりディナーの気分だな、よしそうしよう」

マ「わあ、ありがとうございます!

  それじゃあ明日の夜の予定は空けておきますね?」

マ「楽しみだなあ〜副班長のおごり♪」

ネ「……女ってこわい」

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