第44話 単独行動はアナ
そう言えば、小町さんがセタを殺した時に悪魔全員が小町さんを恨んだのは何故だろう。悪魔とはそんなに民族団結力が強いのだろうか。
いや。ここまでの発展を遂げてなお、一人の死を悲しむ者は多くとも、村八分にしてしまおうと言う発想の者は、悪魔と言えど多くは無いはずだ。
ではなぜ……。セタは悪魔全員から慕われていたからだろう。そんな立場のセタの、姉と言うならば。
「サテナ。お前、悪魔のトップなのか?」
「実は……ね」
合点がいった。
王家だと言うなら、さっきサテナを見つけた悪魔たちの興奮も、セタが悪魔全員から慕われていたことも納得が行く。
「何だよ、お前」
「ごめんネ、小吉。こういうことは、もっと早く言うべきだったヨ」
今までの口調が混ざり、サテナが寂しそうに俯く。
……そうじゃない。
「そうじゃねえよ」
「?」
そうじゃないんだ。
だって……。
「悪魔の女王様って、カッコイイじゃんかよ!」
俺のオタク魂に響いた。
「なんだよ! もっと早く言ってくれれば、もっと熱い展開が待ってたってのに!」
「え? 小吉?」
「悪魔の女王様で、名前がサテナって事はあれか? サタンの血族か? だとしたらチョーカッケーじゃん!」
ロマンの先に、男子は皆子供となる。
「えっと、サタンは父上で……」
「お父さんが悪魔王サタンか! んじゃ、会わなきゃな!」
「え?」
「世話になってんだ! 親御さんに挨拶だろ!」
あれ。なんか表現間違えた気がする。
サテナの顔も赤くなっている。
やっぱり表現間違えたわ。
しかし、興奮状態の俺はそんなことどうでも良い。とにかく今は、悪魔王サタンに会いたくてしょうがないのだ。
「なあ早く! 王城に行く道はどっちだ?」
「ええと、こっちだヨ」
サテナが指さす方向に、サテナの手を取って走り出す。
ああ。
俺今。
めっちゃ
――――――
「「ごめんなさい」」
俺とサテナは正座で少女の前に座る。
「全く。勝手な行動はしないで下さい」
「「本当にごめんなさい」」
目の前にいる青髪の少女、アナは俺たちにゲンコツを食らわせて、滑走の能力で背中がヒリヒリするまで摩擦をし続けたのだ。
「これに懲りたら、単独行動は禁止です」
「「はい」」
「特に小吉さん。あなたは私から一瞬たりとも離れちゃいけません」
「いやそれは…………はい」
アナの笑ってない笑顔に、俺は反論できずにいる。
いやでも……。
「全く二人は。女の子一人を知らない土地に置いていくなんて」
「あたしも女の子だけど?」
「何か言いました?」
「きっと空耳だヨ」
サテナまでアナの怒りに圧倒される。
いや、でも…………。
単独行動は、アナだと思うんだけど。
こんな異世界納得できねえ 窓雨太郎(マドアメタロウ) @MadoAmetarou313
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