悪魔界の大問題

第39話 食事での会話

 家に着いたのは早朝で、みんなすぐに寝てしまった。哀だけは「いきなり俺が押しかけても」と遠慮する素振りを見せ、すぐにマリウスさんの所へ行った。

 そして目覚めた翌日。哀はまだ帰ってこないいつも通りの食事。起きたのはみんな午後六時を過ぎてからだった。

「なんか、晩飯なのか朝飯なのかわかんねえな」

「英語では食べる時間に関係なく、起きてから最初に食べる飯をbreakfastって言うんや。せやからアメリカやと朝食やな」

「でも日本では晩御飯よね?」

「イタリアでも三食分けて表現します」

「中国でもだな」

「じゃあ4対1で晩飯だな」

「晩飯でもbreakfastや!」

「はいはい」

 眠りはしたが帰ってきたばかりで疲れも残っており、会話に元気がなかった。

「因みにこっちの世界だと使い分けたりしてるのかな?」

「そういや、ファルナ以外の国についてはちゃんと知らなかったな。ファルナが俺らの世界でいう日本に当てはまる感じで、他の国もあんのかな」

「アメリカは『ベルノア』、イタリアは『ジョスリュア』、中国は『ゴウチャウリャン』という国名で、この世界に存在している。他にもロシアは『ビソール』、サウジアラビアが『ジェスキャル』と、どの国も私達の世界とは国名だけが違い文化や言語、細かい地名だけは共通している」

「なんか中途半端に被ってんだな」

 このことについて、後でメテナドに探りを入れてみようか。

「そう言えば前から気になってたんだけど、三人はなんで日本語喋れるの?」

 大舞がふとそんな質問をした。

 確かに、エドルが関西人に教わった事は聞いたが、アナと真については知らない。エドルのことも、なぜ関西人に教わったかという経緯も知らない。

「俺は転移して来たんが東京やのうて、大阪やったんよ。しばらくそっちにおったもんやから、覚えたんが関西弁っちゅうこっちゃ。最近は標準語にも慣れてきたけどなぁ」

「私は出身こそ中国だが、転移前に暫く日本で暮らしていたんだ。むしろそっちの方が長くてな。中国語は薄らとしか覚えていない」

「私はイタリア人でも日系なので」

 なるほど。聞いてみればちゃんと理由があったんだな。……ん?

「アナ、日系なのか?」

「そうですよ。母方のおばあちゃんが日本人でして。そっちの家族が日本語を話すものですからたまたま私も覚えちゃったんです」

「へえー」

「聞いておいて興味なさそうな返事ですね?」

「いやいや。興味ない訳じゃなくてな。ってかへー以外の解答が見当たらねえよ」

「木下、陰キャだもんね」

「オタクであっても陰キャでは無いと自負じているが」

「自意識過剰なんじゃないの?」

「んだと?」

「きゃーこわーい」

 大舞は俺から逃げて見せたが、その顔は楽しそうだった。……これも自意識過剰なのだろうか。

 疲れを癒しながら食事と会話を楽しんでいると、一人仲間はずれにされている奴がいたことに、当のそいつの声で気づいた。

「んー。みんなあたしを抜きにして楽しそうだネ?」

「あ、サテナさん」

「おはようサテナちゃん」

 俺の刀に眠る悪魔、サテナの存在にすっかり気が付かなかった。

「小吉ぃ。あたしだけ仲間はずれにしてるわけじゃないよネ?」

「……ソンナコトナイヨ」

「ああ! 小吉酷いぃぃ!」

 起きなかった奴が悪いだろう。

「小吉ぃ」

「なんだ?」

 寝ぼけているんだろうか、この悪魔。

「小吉、大好きぃ」

 ……寝ぼけてるな。

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