第31話 歳の差

「えっとつまり、戦争が終わって暫くあと二人は出会い、股がどうのこうのってのは哀の冗談だと」

「まとめありがとう」

 俺が哀と小町さんから聞き出したことをまとめると、大舞が水を差してきた。

「いやぁ、ほんと。普通に冗談だったんだけどな。こまっちが過剰に反応してさ」

「冗談でも酷いですよ」

「じゃあ二人の間にはそういう、男と女の交わりは無いんやな? つまらん」

「つまらんってなんだよ」

「あった方がおもろいやんけ」

「無い方がいいだろうが!」

「うわきたなっ!」

 エドルに俺の唾が飛ぶ。…………。

「全く。古井哀は昔と何も変わっておらぬな」

 頬を赤らめ、小町さんは哀を睨む。化け猫のようなその目つきに、背筋が凍った。

「そう睨むなって。美人が台無しだぜ?」

「そうやってお主は、またわっちをたぶらかすんじゃな。折角せっかく他人のフリをしたと言うのに……」

「まあまあ二人とも、落ち着いてください」

「落ち着くのは小町だけだけどなー」

「何じゃと!?」

 キィ! と小町さんは怒りを顔にだす。頭に角のような物が見えたが……。

(気のせいか?)

 いや、しっかり見える。他の奴らは気にしていないような表情だが……。

「おいおい。角出ちまってるぞ?」

 哀がそう言った。気のせいではなかったらしい。

「なっ」

 急いで小町さんは角をしまった。

 何者なんだろうか。

「コホン。右大臣。古井哀を白神の間へ案内せよ。左大臣は女性達を日本海の間へ」

「「ははっ」」

「残った男性、二人はここに残りなんし」

 右大臣と左大臣は命令に従い、哀や女性陣もそれに応じた。

 六人が出ていき、広間には三人だけとなった。

「して、お主らの名を聞こう」

「俺はエドル。よろしくな」

 関西弁の訛りが辛うじて入り、エドルが先に名乗る。

「俺は小吉です。よろしく」

 俺もシンプルに挨拶をした。

「エドルと小吉じゃな。二人に話があるのじゃ。聞いてくれるかえ?」

「なんです?」

 俺が聞き返すと、奥義で目元を隠してから小町さんは言う。

「どちらか、わっちの……。夫にならんかえ?」

 ………………。

「え?」

「わっちの夫になって貰えないじゃろうか」

「勿論ええで」

「え!?」

 エドルは承諾致しました。……じゃなくて。

「夫って、何を……。エドル、ガチで?」

「こんなに美人さんなんやで? 不満はあらへん」

「いやだって、……歳…………」

「なんか言ったかえ?」

「いえ! 何も!」

 小町の笑顔が怖い。

 いやでも、女性の年齢の話はしちゃいけないとは言いつつ、小町さんは不老不死古井哀の古い知り合いだから相当な年齢のはずだし……。見た目は十代後半から二十代前半くらいの若々しさだけど。

「俺で良ければ、伴侶になるで」

「本当かえ?」

「嘘はつかへん」

 小町さんはキラキラと目を輝かせ、エドルは爽やかなイケメンになっている。……いや、顔変わるのはおかしいだろ。

「エドルよ。それでは婚礼の儀式を上げようではないか」

「まだ結婚届も出してないのに、早いんやないか小町?」

「お前ら正気かよ……」

 コミュニケーションアプリのヤリモクもびっくりだよ。

 おめでたい事なんだろうけど、俺はどうしたら……。

 あ、そうだ。この場にもう一人いるじゃないか。そいつに相談しよう。

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