第23話 かくれんぼ

 馬鹿エドルたちが見つけられないのなら俺が探すしかない。といっても、屏風の裏にいることはわかっている。

「隠れるのが下手っぴだね古井哀。あんたのいる場所はわかってるよ」

「ほんまか小吉!」

「お前は黙ってろ」

「ククク。木下小吉。お前は俺のいる場所を本当にわかっているのかな? もしかしたらお前の思ってる場所じゃないかもしれないぞ?」

「なに!?」

 確かに屏風の裏から声がするからと言ってそこにいるとは限らない。声だけを屏風の裏から出しているのかもしれないし。

 もっと慎重に……。

 まずは、いなくても予想が外れたと思わせないようにさりげなく屏風の裏が見える位置にいこう。

 いや、まあいないか。そう思いながら俺は屏風の横に立ち、裏を見る。

 そこには予想通り、古井哀がいなく……。

「「あ」」

 いた。目が合った。

 綺麗に整えられた髭。建物の雰囲気に合ったボロボロの着物。そして刀。恐らくそれは、話に聞いていた古井哀で間違いないだろう。

「えっと……、古井哀さんでよろしいでしょうか」

「あ、はい。そうです。お世話になっております」

 ………………。

 解せぬ。

 あっけなく出てきた古井哀。こんな展開を誰が予想しただろうか。あ、みんな予想してたか。ですよねー。

「さすがやな! でかしたで小吉!」

「エドル。お前が馬鹿なんだと思う」

「なっ!」

 とりあえずこれは放っておこう。

「んで、古井哀。」

「ん?」

「俺に用があるんじゃねえのか?」

「え」

 俺は一瞬、頭が真っ白になった。

「なんで知ってるんだ?」

「いや、だって」

 哀は呆れたようにガックリと頭を下ろした。

「用がねえと俺を探してこんなとこまで来たりしねえだろ」

「あ、確かに」

 結論。俺も馬鹿だった。

「まったく……最近の転生者は。んで、なんの用だ?」

「ああ。えっと、二つあるんだけど」

「いいぜ」

「一つは、この建物が幽霊屋敷だとかで手配されてるから、なんとかして欲しいってこと」

「ああ、そうなの? わかった」

 以外にあっさりいくんだな。

「二つ目は、……説明ムズいな。んまあ、俺たちと一緒に、東京に来てくれ」

 別に仲間に誘っている訳では無い。そんな麦わらの海賊みたいなことじゃない。のだが。

「俺を……仲間に?」

「違う」

 ここにいる人間がみんな馬鹿だと証明されました。

「お前に会いたがってる人がいるんだよ」

「俺に会いたがってる? ……名前は?」

「ユーリ・マギウスって人なんだけど」

「マギウス!?」

 哀は屏風を倒し、驚いた顔でこちらを見る。

「マギウス……。間違いないか?」

「え? あ、ああ」

 一体マギウスという苗字が何を表しているというのか。

「そうか……。……わかった。東京に行く」

 哀はそう答え、屏風を踏んで俺たちの方に歩いて来た。これで謎が解ける。……そう思った矢先だ。

「待てい。古井哀」

「!?」

 おっさんのような、いい声が響いた。その声は哀の持っている刀から聞こえているようだ。

「お主、契約を忘れた訳では無いだろうな?」

「そ、そういう訳では……」

 契約? この刀、恐らく妖刀だろうか……。

「妖刀の契約は一生。お主か吾輩わがはいの身が滅ぶまで、契約は続くのだ」

「いや、ちょっとお出かけするだけだから……」

「ちょっとお出かけも契約違反だ! 破ればお主の命はないと言ったはずだぞ」

 それ、ご飯とかどうするの?

 あ、幽霊使うのかな?

「でも……」

「貴様、死にたいのか!」

「ちょいと何言うとるのかわかりまへんで。月斬丸つききりまるはん」

 エドルだ。はっと見たその顔は、今まで見たことがない。怒った顔だ。

「妖刀契約には生死は干渉させれないはずだヨ。それは契約成立してないヨ!」

 俺の腰からした声。サテナだ。今まで忘れていた。

 この二人がいれば安心だ。

「「喧嘩で勝負をきめるで(ヨ)」」

 ……いや、不安だ。

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