第22話 哀
「ここが例の幽霊屋敷や」
「うわー。話数変わったら場面も変わる。都合がいいー」
エドルがわざわざ教えてくれたことに、俺は棒読みで答える。
幽霊屋敷の見た目はなんと言うか…………。まさに幽霊屋敷。これぞ幽霊屋敷。と言う風貌だ。
古びた和風の建物に、荒れ果てた広めの庭。周囲は
「ほほほほほ、ほんとに入るんですか?」
「ややや、やだ。やっぱりうちやだぁぁ!」
アナと大舞はまだ怖がっている。すぐ目の前なんだからもう慣れていて欲しいのだが、やはり苦手な人には苦手なんだな……。
「じゃあ行こうか」
先導を切ったのは真だ。この人、意外と度胸がある。
真に続き、エドル、俺と、幽霊屋敷に入って行く。
「なんで行っちゃうんですかああああ!」
「うち……うち……あ」
大舞はパタリと倒れ、気絶してしまった。
「ああ。アナ。大舞と一緒に向こうの住宅街行ってきな。多分、どっか休ませてくれる家とかあるだろうし」
「はい……。ありがとうございます小吉さん。名前や力は小さくても、心は大きいですね」
「小さいは余計だ」
失礼だなおい。
にしても中は……。
「……なんもないなぁ」
「幽霊がうじゃうじゃ出るんじゃなかったのかい?」
「そのはずなんやけど」
エドルと真はそんな会話を交わしている。が……。
(俺にはバッチリ見えてます。うじゃうじゃいます!)
今も俺の隣を何故か並んで歩いているし、各部屋に五人くらいは普通にいる。
なんで? 俺って霊感あったのか? この二人が全く見えない体質なのか?
「……すっごい感じるヨ」
「あ、サテナ」
久しぶりに刀から出てきたサテナが、深刻な表情でそう告げる。
「感じるってやっぱり……?」
「うん。オバケの気配だヨ。そこかしこから。キモイくらいに」
「まあ、感じるって言うか俺はバッチリ見えてるんだけどね」
「だろうね。悪魔と契約してるから、
「え。幽霊って憂魔だったの? 妖怪だと思ってた」
サテナとそんな会話をしながらも、どうやら最上階の最後の部屋に着いたようだ。
……古井哀がいるとしたら、ここがラストか。
「ほな、開けるで」
エドルがゆっくりと戸を引く。
和室。まあまあ広く、一部屏風で隠れている。
「なんもあらへんな……」
「いや。一応屏風を調べないかい?」
「せやな」
二人が屏風に歩いて行く。
と、突然畳が一枚消え、その下に空いていた穴に真が落ちてしまった。
「真ん!」
エドルが穴を覗き込む。
……真の声はしない。
するとまた突然。
『誰だ。俺のうちに入ってきたのは……。俺のうち……。うち……。まあいっか』
屏風の奥から声が聞こえた。
「誰だ!」
『誰でもいいだろ。にしても、よくぞここまで辿り着いた。幽霊達をかいくぐってくるとは』
「いや、幽霊なんて一匹もおらんかったで?」
「ああエドル。いたよ。多分エドル達には見えてなかったの」
「いたんか!? 見たかったわ〜」
結構シリアスな場面なのだが、謎の声の『まあいっか』のおかげでこの有様だ。
「んで、お前は誰なんや」
『ふっふっふ。見つけたら教えてやろう』
は? ふざけてるの? 明らかに屏風の方から声がすんのに『見つけろ』って、保育園のかくれんぼかよ。エドルも呆れて……。
「なにぃ? クソっ。どこや!」
マジですかい。
この人達大丈夫か?
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