第11話 人馬怪

 振動の正体は、もう一体のモンスターの出現だった。

 ビルの間から顔を出し、キョロキョロと周りの様子伺うと、そのモンスターは両脇りょうわきのビルを破壊した。

「た、助けてくれぇぇー!」

「死にたくないー!」

 ビルの近くにいた警察達が次々と下敷きになっていく。

 倒壊したビルから、モンスターは全身を現した。

「で、でっけぇ……」

 そいつはさっき警察が捕らえたモンスターより一回りも大きく、四足歩行だが更に二本腕があるモンスターだった。

 その姿はまるで、神話に登場する怪物の……

「ケンタウロスだ」

 真が口にした名前。

 ケンタウロス。

 確かこの世界ではモンスターはいくつかの種類に分かれていた。

 まず、大きく分けて三つ。怪物かいぶつ妖怪ようかい、そして憂魔ゆうま

 その中でも更に細くわけられている。

 ケンタウロスは怪物、神話種だったはずだ。

 俺のケンタウロスのイメージは、馬と人間のハイブリッドという感じだった。

 しかし目の前にいるケンタウロスはビル程の大きさで、足が四本腕が二本あるだけ。顔は人間ではなく、なんというか気持ち悪い、どちらかといえば馬に近い。色は肌色でも茶色でもなく灰色だ。

「ケンタウロスってあんなんなのかよ」

 周りを見れば人だかりはなくなっている。皆逃げたようだ。

 生き残った警察が懸命にケンタウロスと戦っているが、大半が死に体制を崩した状態ではうまく戦えていない。

「私達も戦いましょう!」

「勿論だよ。その為にきたんだから!」

「さあ小吉!行くぞ!」

 三人に言われ、俺も走りだした。

「あ、でもちょっと待って」

 大舞が止まった。

「どうしたんですか?急がないと!」

「でも……」

「どうしたんだよ」

 足踏みをしながら急かす。

「ウチら……武器ないよ」

 あ。


「目標目の前!超大型ケンタウロス!これは機会チャンスだ。絶対逃がすな!」

 よっしゃー!言ってみたいセリフ言えた!

 喜びと焦りを持って俺はケンタウロスの目の前に立つ。

 ここまで来たら、五年ぶりではないがあのセリフも言おう。

「よう……初めましてだな」

 よし。もう俺死んでいいや。

 いや、童貞卒業まで死ねない。

「Weeeeeeeeeeeeey!!!」

 後から声が聞こえる。

「小吉さん!これ凄いです!凄い滑ります!」

 滑走の能力を使って滑って来たアナが楽しそうに……新幹線並のスピードで滑っている。

 足にはそのへんの店からパクったスケート靴をはいているが……よく転ばねぇな。

 アナはそのまま猛スピードでケンタウロスに近ずき、ケンタウロスのすぐ近くにくると重力を無視してケンタウロスの足を登り始める。

 スケート靴を履いている為、金具でケンタウロスの足の皮膚が切れていく。

 滑走……恐るべし。

「なんだあのガキ」

「すげー勢いで斬っていくぞ!」

 警察も感嘆している。

 一方、大舞と真は……

「いいかい。思いっきり引っ張って、軽く離すんだよ」

「思いっきり……。ウチ力ないからひっぱれないよ!」

「それ玩具おもちゃじゃないかい!まだ軽いほうだろう!」

 弓矢で遠距離攻撃を仕掛けようとしている。

 真は中国で弓道をやっていたらしい。

 っと、他の奴らに気をとられてないで俺も戦わないとな。

「サテナ、準備おーけー?」

「おーけーだヨ。いつでも行けるヨご主人様!」

 刀の中からサテナの声がする。

「そんじゃあ、いくぞ!」

「おおぉ!」

 俺は刀を鞘から抜き、ケンタウロスの方へ猛スピードで走って行く。

 サテナに筋力、走力、跳躍力を上昇して貰い、戦い安くした。

 ケンタウロスの目の前に行き、思いっきりジャンプする。

 喉付近まで跳ぶと、刀を振りかざして俺とサテナは叫んだ。

「「火拳ファイアー怪物斬モンスターカット!」」

「って、技名クソダセェ!」

 ツッコミながら俺は妖刀小悪魔を振った。

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