第5話 戦闘試験

「それでは戦闘試験、小吉さん対エドルさんの闘いを始めまーす」


 俺らはエレベーターで八階に降り、運動場に来ていた。

 一試合目は大舞対アナ。女の子がキャーキャー言ってるだけの闘いだった。

 そして二試合目の俺。相手は誰かと思いながら指定された武器、百均のおもちゃの刀を持ってフィールドに入った。

 フィールドは十メートル×十五メートルの長方形で、人工芝が敷いてある。

「では登場していただきまーす。エドル・ホルドさんでーす」

 エドルか。どんな奴なのか。

 職員が手を向けた方を見ると、筋肉ムキムキのおとこが歩いてきた。

 その見た目は日本人ではない。目の色。髪の色。高い鼻。

 アメリカかヨーロッパ辺りの人だろう。

「お前はんが小吉か。名前の通りちっこいのー」

 エセ関西弁だ。

「エドルさんはすごい方なんですよー」

 職員がエドルを説明し始めた。

「エドルはですねー。見ての通りムキムキですしー。なんと、ドラゴンを倒したんですよー」

 ドラゴンを……

 はい?

 マジでか。俺今から龍殺しにキルされるのか。

 俺の顔は自分でもわかるほどびびっていた。てか、超びびってる。

「そんなにビビらんでもええで。お前はんを殺したりせーへんからな」

「信じられねえよ」

「木下大丈夫!その人だってチビッ子殺しなんて呼ばれても嬉しくないから!」

「ぶりっ子殺ししてやろうか」

 しかし、大舞の言葉を聞いて少し安心した。

「それでは戦闘試験、小吉さん対エドルさんの闘いを始めまーす」

 遂に始まった。俺の戦闘スキルを見せてやる!

「どないしたんチビッ子。かかってこーへんのか?」

 イラッ

「そっちこそ。攻撃仕掛けてくれよデブ。俺は防御タイプなんだよ。」

「デブやない。筋肉や」

「デブだろ」

「デブやないてチビ」

「チビで悪かったなデブ」

 言い争いが始まった。

「チビ」

「デブ」

「チビ」

「デブ」

「闘ってくださーい!」

 職員に怒られた。

 よし。ここは俺の能力を使うか。

 確か予言だったな。予言すればいいのか。

「エドル。あなたには三秒後に重りが落ちて来るでしょう」

「なっ!ま、まさかお前はん、呪術師かいなっ!アウチ!」

 ゴツッという音がなり、エドルはその場にしゃがみこんだ。

「お、お前はんやりおったな」

「見たか!でも……」

 俺は落ちてきた小さい重り十グラムを持ち上げて言った。

「もっと重いの期待してたんだけどな」

「それでも十分痛かったで」

 そうか。

 次はどうすっかな。

 よし。

「エドル。あなたには三秒後、いしゅずのトラックが落ちて来るでしょう」

「は!?そ、そんなん落としたら俺死んでま!いだあ!」

 エドルは痛がってるが、落ちて来たのはトラックじゃなく……

「チョミカかよ」

「でもしっかりいしゅずやな」

 なんでだよ。

「もしかして小吉、お前はん異世界転生してきたんか?」

 おっと。エドルは異世界転生を知っているようですよ。

「そうだけど。もしかしてお前も?」

「そうやで。てことはお前のさっきのは能力かいな」

「ああ。俺の能力だ。『予言』だぜ」

「もはや呪いやな」

 呪いと来たか。まあ、人の未来左右するんだしな。呪いといえば呪いか。

「お前も能力あるんだろ?」

 エドルに聞いて見た。

「勿論や。」

 エドルはそう答えると、下を向いて笑い出した。

「何笑ってんだ」

「見たいか?」

「は?」

「俺の龍殺しの能力見たいか?」

 あ、これはもしかして……

「そんなに見たいんなら見せてやるで」

 不気味に笑いながらエドルは少し後ろに下がった。

「ほな見せたる。俺の能力」

 すると背中から無数のうにょうにょした……

 なんて言うんだっけっか。

「『触手』発動」

 そうだ。触手だ。

 って、触手!?

 エドルの触手は俺に向かって一斉に進んできた。

 ああ、これ……

 チビッ子殺し達成じゃん……

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