第3話 冒険者たるもの
冒険者組合に入った俺たちは最初に受付に向かった。
それにしても誰もいない。おかしい。
冒険者組合ってもっと賑わってると思うんだけど。
「ようこそ冒険者組合東京本部へー! 冒険者になられる方ですかー?」
受付に行くと元気な職員が迎えてくれた。
職員の質問に対して俺は「そうです」と答える。
すると職員から紙を渡された。
「その用紙に必要事項を記入して下さーい!」
職員に言われた通りに俺と大舞は必要事項を記入した。
用紙をよく見ると、国名が日本ではなかった。
「ファルナ国……? これが国名か?」
違うのは国名だけで、地域や言語は同じようだ。
名前、年齢など、必要事項はいたって普通で、住所などの面倒くさくなりそうな事は書く必要がなかった。
「木下小吉さんと、大舞花奈さんですねー! では、案内しますのでついて来てくださーい!」
職員はやはり元気に言い、俺たちを案内し始めた。
エレベーターで移動し、俺たちは九階のエレベーター付近の部屋に連れてこられた。
その部屋は壁全体が白く、床はフローリング、なんというか……学校のような部屋だ。
机と椅子が三組ずつあり、俺は右端に座った。
「なんで三つなんですか?」
大舞が質問した。
確かに、俺と大舞で二人。二つでいい筈だ。
「今日はもう一人予約されてる方がいるんですよー。その方を今からお連れ致しますので少々お待ちくださーい」
職員は大舞に向かって言うと、部屋から出て行った。
その後大舞が俺の隣に座り、どこから持ってきたのか本を読み始めた。
十五分しただろうか。急にドアが開いた。
部屋には綺麗な青い髪の、赤いベストを着た少女が入って来た。歳は多分、俺より少し下くらいだろう。
「あ、アナ・ルイです。……よろしくお願い……します……」
アナと名乗った少女は緊張したように自己紹介をした。
こんな時は俺が自己紹介の基本を見せてやる!
「き、きき、木下……し、小吉、ででで、ですっ。よ、よりょしきゅ!」
噛んでしまったああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!
「全く木下ったら、馬鹿だね。大舞花奈だよ。よろしくね」
なんだよこいつ。挨拶できるとか凄すぎ……
俺が絶望のドン底スレスレのラインに落ちたところで、職員が紙を持って入って来た。
「皆さーん。これから試験を行いまーす。最初の試験は筆記でーす」
……は? 試験?
い、いやいやいやいやいや!!! 聞いてないよ!?
試験? いきなり? 異世界の知識全然ないのに!?
「メテナド、なんで言ってくれなかったんだよおおおおおお!!!!!」
「メテナドを知ってるんですか!!??」
俺がショックを受けて絶望のドン底スレスレだったのがドン底に叩き落とされたところで、アナが驚いたように聞いてきた。
「知ってるも何も、俺らがここにくるハメになった原因だぜ? てか、お前も知ってんのか?」
「はい! もしかして、小吉さんと花奈さんも転生してきたんですか?」
「ああ! そうだよ! お前もか!」
まさかこんなところで俺らと同じ境遇の奴に会えるとは!
「でも、お前日本人じゃねえだろ? なんで日本に転生してきたんだ?」
「家族で旅行してる最中に送られたんです。一ヶ月前でした。」
一ヶ月前からここにいたのか。
「一ヶ月何してたんだ?」
「バイトをして、こっちのお金を貯めてました。」
偉いな……
「てか、家族旅行中にとか、とんだ災難だな。」
「ホントですよ。」
「二人で和んでるところ悪いけど、私も聞いていいかな?」
大舞が口を開いた。
「なんだよ大舞。喋れたのか」
「喋れるよ!」
俺の意地悪にちゃんとツッコミをいれた大舞はアナの方を向き、真面目な顔で聞いた。
「日本語ペラペラだけど……どこの出身なの?」
気になる! 気になるけどそんなに真面目な顔で言うなよ!
「イタリアです。日本語は小さい頃から勉強していたので」
そして普通に答えたよ!
「あのー……試験始めたいんですがー……」
職員が俺らに向かって訴えかけた。
「ああ、すいません。どうぞ」
俺は職員にそう言うと姿勢を戻して試験を受ける準備をした。
「では。筆記試験開始でーす!」
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