異世界に来ました

第2話 都市

 だんだんと視界が明るくなっていく。

 俺は確か……そうだ、異世界に来たんだ。

 んで、その異世界はどんな風なのか……

 俺は周りを見渡す。目に映ったのは、

「あれ? さっきの公園?」

 転生してないのだろうか。そんな筈はない。

 さっき確実に感じた。全ての感覚が体から離れ、別の体に入り込むのを。

 見たわけじゃない。しかし、そう言うのが一番適切な感覚だった。

「気が付きましたか」

 声がした方を見てみると、そこにいたのは確かにメテナドだった。

「木下! これどうなってるの? さっきいた公園だよね? 何にも起きてなかったの?」

 大舞もいた。

「そんなこと、俺が聞きてえよ。

 大舞がこちらをじっと見つめているので恥ずかしくなり、俺は慌ててメテナドの方を見て言った。

「おいメテナド。これはどういう事だ? 異世界転生してねえのかよ」

「ちゃんと転生しましたよ。ここは紛れもなく、あなた達からしたら『異世界』です。」

「いや、どう見たってさっきの公園じゃねえか」

「そうだよ! てか下ろして!」

 大舞がメテナドに言った事で気がついた。俺たちはまだメテナドに掴まれたままだった。

「あなた達はここで冒険者となり、強く生きて下さいね。」

 大舞の言葉をまた無視し、メテナドは話を進めて行った。

「ここに冒険者組合までの地図がありますので、これを見て行って下さい。ではまた」

 そう言ってメテナドは地図を置いて消えてしまった。

 テナドが消えたと同時に俺らも地面に落ちる。幸いにも砂場の上で、怪我こそなかったが、口に大量の砂が入った。

「全く、なんなんだアイツ」

 そう呟きながら俺はメテナドが置いて行った地図を拾い上げた。

「あの人、ウチの事嫌いなのかな……?」

 メテナドに一度も話を聞いてた貰えなかった事が、大舞には余程ショックだったようだ。

 俺はそんな大舞の声を聞き流し、地図を広げてみた。

 その地図をみた瞬間俺は驚き、同時に絶望もした。

「大舞、見てみろ」

 大舞も呼び、俺は改めてその地図をしっかりと見る。

「なあにー……」

 大舞も俺の方に来て地図を覗きこむと、驚くと思ったがそうでもない反応をした。

「東京じゃねえかよ」

「東京だね」

 俺の呟きに対して大舞は当たり前だと言わんばかりの返答をした。


 俺たちは地図の通りに冒険者ギルドを目指した。

 道中、大舞に異世界転生について説明すると、俺が驚いていたのを納得したようだが、大舞自身はそこまで驚いていなかった。

 しかし、やはりここは異世界のようだ。道で多くの獣人やエルフを見た。

 自動車は走っていたが、たまに……本当にたまに、モンスターが荷台を引いている車もあった。……竜車りゅうしゃ、というのか。

 そんな微妙な異世界はやはり東京にある。

 それを確信させられたのがここ。冒険者組合だ。

「……大きいビルだね」

 大舞はその言葉で片付けたが俺は納得出来ない。

「いや、……デカいとかそれ以前の問題だろ! 冒険者組合っつったら普通ファンタジーな建物出てくるだろ! それがなんだよこのビル! アッポル本社かよ!!」

 組合の広大な敷地に俺の声が響き渡った。

 こんなところが冒険者組合なのか。絶対に嫌だ。

 しかも、賑わっているかと思えば全然人がいない。

「木下うるさい! まずいいから中入ろ!」

 異世界を知らない大舞には俺の渾身こんしんの叫びはただの騒音そうおんだったようだ。まあ、そうじゃなくても騒音だろうが。

 大舞に怒られたので俺はとりあえず中に入ることにした。

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