7日目

 よくよく考えたら、彼女と出会って1週間。

 そんな日にデートにまで漕ぎ着けるなんて、僕の恋愛運、年末にかけて急上昇すぎる。

『これで、年始を迎えて駄々下がりしたら笑えるな』

 至極まともなツッコミを翔太がくれたけど。でも本当にそうだったら、どうしようか。

 クリスマスに可愛い女の子が欲しいとお願いし、それが叶う。おかしいだろ。

 まあ、タイプとはまた違うけど。

 好きになるとそういうのって全く関係なくなるものなのか、と高校3年になって初めて実感した。小さいなら、大きくすればいいさ! それが今の、僕の目標……な訳は、全く、ないんだけど。

 とりあえず、他の何かに僕は惹かれたらしい。

 そんなことを考えながら、僕は凍えていた。

 待ち合わせ時間、3時。

 現在、時刻は3時45分をお知らせしていた。

 これは、なんだ。ミッション?

 クリアすれば、ボーナスが貰えるんだろうか。そりゃあ、中山さんとデートできるという点でボーナス貰っちゃってるんだけど。

 それにしても、冬にこのミッションはキツい。

 暖かいところに入りたくても、もしそれで中山さんを待たせたら風邪引かせちゃうし。だからと言って暖かい飲み物買ってきても、秒で冷めたし。

 カイロの1つや2つ、持ってきておけばよかった、と嘆く。

 携帯を確認する。メールはない。

 あと、15分待ったら帰ろうと決めた。

 そう決めたんだ。

 決めたはずだったんだけど。

 結局、夕焼けこやけの赤トンボが流れ出した。

 もう、帰ろう。

「……やっぱりいた!」

 顔をあげると、顔を真っ赤にした中山さんがそこにいた。

「もっと早くにこっちに来ればよかった」

 僕は状況が掴めず、うろたえながら首に巻いていたマフラーを中山さんにかけた。

 グッジョブ、僕。

「いいの?」

「なんか、寒そうだから」

「だって、ずっと待ってたんだもん」

「……え?」

「東口で」

 なるほど。僕は勝手に集合が西口だと信じ込み、こんなか弱い少女を1時間半も待たせていたわけだ。

 全然、グッジョブじゃねえ!!!

「ほんと、ごめん。ごめんね、寒かったよね。とりあえず、中入ろう」

「ん」

 中山さんはにっこり頷いて、手袋を見せつけてきた。

「……可愛い手袋だね」

「違う」

「手袋も貸してほしい?」

「違う! 寒いから暖めて!」

 世の中の紳士諸君。

 こんなに可愛らしい手を繋ぐ為の誘い文句が他にあるだろうか。いや、僕は知らない。

 そりゃ、他にこんなシチュエーションになったことないからね。

「……うん」

 僕はおずおずと中山さんの手を握った。

 そうすると、彼女は何故か嬉しそうに小さく跳び跳ねた。

 これは、いけるんじゃないか。

 僕は、そう確信した。そして何故か思った。

 今は違う気がする、と。

「私、ココワ飲みたい」

「……ん?」

「こ、こ、わ!」

「う、うん。じゃあ、とりあえずカフェ入ろうか」

「やった!」

 彼女は、また跳び跳ねた。

 その後は、勿論、予想通りの展開だった。

 カフェでお互いの話をし、仲良くなり、「今日うち、親がいないんだよね」と彼女は呟き、僕は「とりあえず送ってくよ」と言いつつ部屋に上がり込み、それから先はご想像におまかせ!

 何てこともなく、普通に話して普通に終わった。

 唯一、収穫があったとすれば。

 大晦日の夜、近所の神社に2人で行くことになったくらいだ。

 やっぱり、グッジョブ、僕。

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ヤンデレ彼女と僕の100日戦争 海馬 @takenoko_wanwan

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