2日目

 目覚ましが鳴った。

 何で休みなのに目覚ましがなるんだと、恨めしげに唸る。いや、休みじゃない。

 25日はクリスマスでも、休みじゃないんだ。

 どうせなら天皇は25日に生まれてくれればよかったのにと、愚痴りながらも支度する。枕元にプレゼントは無い。

 冷たい制服に腕を通し、寝癖を直しながら歯を磨く。ここへ来て朝飯を食べていなかったことに気づく。いつも通りだ。

「いってきまーす」

 母親がお弁当と一緒に置いてくれていた"特製目玉焼きハムエッグチーズケチャップサンド"を口に頬張り、自転車を漕ぐ。いつも通りだ。

「ゆーすけー。今日も口に咥えてんのかよ」

 3番目の曲がり角で翔太と合流する。口に詰まっているから返事はせずに、右手を挙げた。いつも通りだ。

「サンタ様はプレゼントくれたか?」

「……んや」

「まあ、枕元に美少女なんかいたら、こんな早くに学校来れねえか」

 頷くフリをして、脇腹にパンチを入れる。

 いつも通り

「あのぅ」

 じゃないことが起きた。

「はぃい」

 変な声で返事をしながら、翔太と僕は振り向く。そこに見るからに、まないt……美少女が立っていた。

「私、橘南高校に行きたいんですけど」

 彼女はマフラーの下からはみ出た黒髪を弄りながら問いかける。

「あ、それ、俺らの高校の隣じゃん」

 翔太の目は餌を見つけた獣並みに輝いていた。

「案内しますよ」

 僕もそう言って、まじまじと彼女を見つめる。

 長い黒髪。ぱっちりとした瞳。長い睫毛。きゅっと結ばれた口。ここまでは良い。

 問題は、1つ。

 僕は、巨乳が、好きだ。

 翔太はそこは関係ないらしいので、よかったなぁーと優しい眼差しを向ける。そして気がつく。

 こいつ、彼女持ちじゃん、と。

「と、とりあえず、歩いてると間に合わないからさ。後ろ、乗れる?」

 僕はおずおずと彼女を手招きする。彼女はニコリと笑って「はいっ」と荷台に乗った。太ももに荷台が当たったのか「ちべたっ」と小声で叫んでいた。

 今度からは、クッション持ち歩こう、と胸に誓う。

 ふと、隣から殺意を感じた。

 お前のためだよ、と口パクで伝えるが、どうやら伝わらなかったらしい。何故か、余計に怒っていた。

 後で聞いたところ「お前の負けだよ」と僕が言ったと思ったらしい。酷い友だちをもったものだ。

 それはさておき、そんなこんなで僕らはこの美少女を学校まで送り届け、メアドをゲットするところまで完了した。

 もちろん、翔太にはゲットさせなかったけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る