1日目

 なんの変哲も無い毎日。

 朝起きて、歯磨き、飯を食べ、学校に行き、授業を受け、友達と他愛もない話で笑い、部活をサボり、ゲーセンで遊んで帰り、夕飯を食べて、寝る。

 毎日、毎日同じことを繰り返して、一体何が楽しいのか。それは、当の本人である僕にもわからない。

 なにか面白いことはないか、探していた。

 例えば、クラス1の美少女が実は僕を好きだった、とか。道で食パンを口に咥えた美少女とぶつからないかな、とか。

 今思えば、恥ずかしいくらい単純なことを考えていた。

 そう、あの日も。万年クリボッチの僕は、忘れていたんだ。あの日が特別な日だってことを。

 1年間いい子にしていた子供だけ、願いを叶えてもらえると。

「あー。優しくて、巨乳で、生徒会長みたいな感じの彼女が欲しいわー」

「なにお前馬鹿なこと言ってんの」

「サンタさーん。お願ーい」

「やば、こいつ」

「翔太も一緒にお願いしようぜ」

「俺は祐介と違って彼女いるからさ、ごめん」

「くそ! お前もか。爆発しろ」

「怖えな」

「あーもう、神様、仏様、サンタ様、お願い。

 高校3年にもなって、クリボッチだけはやめてくれー」

 そう。

 願いを聞いてもらえるのは"いい子"だけ。

 部活はサボるし、宿題はしないし、髪も金髪を通り越して白く染めてる僕が、願い事なんかしていいはずなかったんだ。

 今ならわかる。やめとけ、僕。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る