第16話 違反

 窓が俺の顔をじっと覗く。口臭が半端ない。

「なんだよ……」

「いや、大地。お前これ、この章何話続いてると思う?」

「えっと……、今回で四話目?」

「そうだ。何か思わないか?」

 腕組みする窓に少しムカつく。

「なにか......まあ、思うかな」

「どう思う」

「はよ終われって」

「だろうな」

 お前のせいだがな。

「ほんと、早く終われよ」

 お前のせいだがな。

「全く、何話続ける気だよ」

 お前のせいだがな。

「やっぱりこれ、『この顔にピンと来たら助けてくれ』は連載終了で正解だな」

「お前のせいだがな!」

 ビクンと窓が飛び上がる。

「おま、声でけえよ」

 声がでかい......だと?

「お前、作者だからって調子のんなよ?」

「......さーせんした」


 さて。作者というだけで何でも出来るこのクソチート野郎にどう勝つかだ。

 答えは簡単。綺麗さっぱりせばいいのだ。

 おっと。言い方が物騒だったな。こう言おう。

 作者は殉職します。

 ......これも物騒か。

 まあいい。窓雨太郎これを殺れば勝つ。殺るのは簡単。俺の弱点と同じところを集中的に攻撃。その場所は――――――

「お前ら。股間ティンポ右肘みぎひじを狙え」

「何で」

股間てぃんてぃんはわかるだろ?」

「ま、まあ......」

「俺には右肘に『血管腫けっかんしゅ』っていう、血が溜まってる感じの奴があるんだ。俺があいつの分身なら、血管腫はあいつにもある筈」

「なるほど」

「そこを集中的に叩けば大ダメージ、と?」

「そーゆーこと」

 俺は振り返り、ニカッと笑った。

「大地、笑顔キモイ」

「わかってるけど、傷つくからやめて!」

 と、とにかく。こいつを倒そう。

「おしゃべりは終わった?」

「ああ。時間をありがとう」

「待ちくたびれたぜ」

「お待たせお待たせ」

 そういうと俺は右手を上げ、

「さあ、最終回突入だ!」

 そんなかっこよくもない台詞を、かっこつけて叫んだ。

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