第12話 夢か

 なんだここ。どこだ?

 真っ暗闇。何も見えない。


 本当にどこだここ。

「気がついたみたいだな」

 後から声がする。

「誰だ?」

 振り向くと、俺と同じくらいの身長の男が腕を組みこちらを見ていた。

「よお大地」

「誰だお前」

 やけに馴れ馴れしいな。

 顔は……、はっきりとは見えない。

「俺か? 俺はお前だ」

 どういうことだ?

 いや、察した。これは夢だ。

「お前は俺か。成程。んで、俺が俺に何の用だ?」

「なんか変な文だな」

 いいだろ別に。

「まあ、用って程じゃないんだけどな」

 じゃあなんだよ。

「まず一つ訂正。俺は作者だ」

 成程作者か。作者?

「は?」

「まあ、驚く……どころじゃないだろうな」

「いやいやいや。作者登場とかどういうことだよ」

 どんだけ目立ちたがりなんだよこの作者。えーと……、窓雨そううだっけ?

「じゃあ簡単に自己紹介を。俺は作者のまど雨太郎あめたろう。あ、窓と雨太郎で区切ってくれ」

 そう読むのか。てか窓が名字だったのか。

「じゃあ最初に言ってた『お前は俺』ってどういう事だ?」

「それは…………。お前のモデルが俺自身って事だ」

 じゃあ俺が今まで体験してきた面倒事の数々は……

「お前のせいかよ」

「俺だって好きで面倒な人生送ってねえよ」

 それは失礼しました。

「んで、それを教えてどうしたい」

「作者として伝言だ」

 窓は座り、くつろいで言った。

「お前にサンが救えるか!」

 急になんだよ。

「どういう意味だ」

「次何話だ?」

「次? 今十二話だから……、十三話?」

「お前にサンが救えるか!」

 サンって十三の「三」かよ。

「次回なんかあんのか?」

「わから無いねえ。ハハハ」

 俺のモデルクソうぜえ。

「ただ、一つ言える事がある」

「なんだ」

 一呼吸おき、窓は口を開く。

「お前にサンが救えるか!」

「それもういいわ」

 サンと三をかけるとかクソつまらん。

 とはいえ、次回何がおこるというのか。

「んじゃ、そういうわけで俺帰るわ」

 窓はそう言うと消えてしまった。


 目が覚め、俺は教室にいた。

「あ、大地起きた」

 授業中のようだ。いつの間に寝ていたんだろう。

「何時間目だ?」

「六時間目だよ。お前丸一日寝て保健室にも運ばれてたんだからな」

 は?丸一日?

 どういうことだ?

「じゃあ俺給食は?」

「寝ながら食ってた」

 ………………。

 俺超人説。

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