第11話 イラスト

 絵を描く。それだけなら幼稚園児でも認知症の老人でもできる。

 しかし、「絵」を「イラスト」と読めばどうだろう。

 なんか……、プロがやるイメージが強い。

 アニメ、マンガ、ラノベの挿絵。これらの絵が俺的にはイラストという感じだ。

 俺のクラスにいる愛子あいこという女子。彼女はクラスの誰もが認めるイラストの技術を持っている。

 しかし、愛子の他にもう一人、知る人ぞ知るイラストレーターがいるのだ。

かえで、お前なんでそんなにうまく描けんだよ」

「んー、慣れだね」

 楓。イケメンで絵がうまくて、勉強は……多分俺の方が上だが、それでも俺が尊敬してる人の一人だ。

「慣れっつっても、この画風に慣れてっからなあ」

 俺も絵を描くのは好きな方だ。幼稚園の頃からしょっちゅう絵を描いていたが、サブカルにハマったのは小六の頃できっかけはパワプロなのでイラストというものをあまり見た事がなかった。

 小学校からアニメ好きで厨二病を患っているという楓とは経験からしてまず違う。楓は小学校で既に棒人間をマスターしていたらしい。

 対して俺は……なんだこの妖怪は。

 顔は性別がわからない。体は関節がおかしい。

 なんだこの妖怪は。

 絵をあまり描かない人にはたま上手いと言われるが……妖怪だ。

「どうすりゃいかな?」

 楓にコツを聞いてみる。

「そうだな……。輪郭をもっとシュッとさせてみて」

 輪郭をシュッと……。

 俺は輪郭を消し、さっきよりも細めの顎にした。

「こんな感じかな」

「そんな感じ……」

 言われた通りシュッとさせた絵を見て思う。

 なんだこの不健康孤児は。

「体は……服はシワ付けて」

 シワか。

 俺は描いていたキャラの服に何本か線をいれ、シワっぽくしてみた。

「こんな感じかな」

「そんな感……」

 それを見て思う。

 なんだこの無駄に線の入ったダッサイ、服なのかよくわからん物体『X』は。

 これを見て決心した。

「楓。俺決めた」

「ん?」

 俺は楓の顔を見て言う。

「俺、ボテルギウス専用絵師なるわ」

「………………」

 返事はなく、長い沈黙が流れる。

「……がんばー」

 それだけかよ!

 家に帰った後俺は模写で練習をしたが、結局うまく描けたのはボテルギウスだけだった。

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