第8話 遊ぼうぜ

「大地ー。明日遊ばない?」

「え?」

 信じられなかった。この俺が遊びに誘われた……。

 きっとこれは何かの罠だ。多分承諾した時点で嘲笑うに違いない。笑い方はきっとこうだ。

『ちょ、お前、マジで遊ぶと思ったの? 嘘に決まってんじゃん! マジでウケる!』

 そうだ。そうに違いない。これは俺をおとしいれるための罠なんだ。絶対そうだ。

「どう? 明日。俺と駿士はやと愛司あいじとあと、維斗ゆきとで行くんだけど。お前もどう?」

 そのメンツか。誘ってきた順也じゅんやと、それに駿士なら俺をおとしいれようとするのはギリギリわからなくもない。でもこの二人でも自分から人を騙すことはない。

 愛司と維斗に関してはそういった事はまったくと言っていい程しない。それだけ信用できるだ。

 ならば……このメンバーなら…………。

 安心してもいいだろうか。

「……帰ったら母さんに聞いてみる。良かったら行くから」

 そんな行かない奴の言い訳ナンバーワンを言い放ち、俺の初めて友達と遊ぶ事が決定した。


 翌日。俺は初めて友達と遊ぶのが楽しみすぎて電車の時間より三十分早く来た。

 遊びに行く場所は隣の市。何せド田舎だ。自分の住んでいる町ではやることがない。その為、自転車で行けば単純に十分で着く隣の市に、学校の決まりでわざわざ自転車で一時間かかる駅まで来て、それから十五分程かけて行く必要がある。

 隣の市にも遊ぶところはイオンのゲームセンターとカラオケが二件、ボーリング場兼バッティングセンターがあるが、どれも学校のルールにより子供だけで行くのは禁止されている。

 しかし!法律以外のルールには支配されないのが子供という自由な生き物である!

 よって、今日の遊ぶルートはいつも遊びに出かけロクに勉強もしない奴ら(家にいるのに勉強しない俺に比べれば社会的にマシ)の話を盗み聞いた感じでは予想はついている!

 まず、イオンのゲームセンターへ行き各自やりたいゲームをする。

 その後奇跡的に全員が集ったところで昼飯を食べにイオンのフードコートにある唯一のレストランで食事をとる。何故フードコートに唯一かは……田舎者に聞かないで欲しい。

 食事の後はまたゲームセンターでゲーム。場合によってはプリクラを撮るようだが俺にはそんなイベント発生しない。

 そのあとはカラオケに行き、電車の時間に帰る。

 さてさて。大地君の初遊びの行方は果たして……!

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