第4話 家族

 家族に絶望した事はあるだろうか。

 父の怠惰さ。母の頑固さ。兄弟の傲慢さ。

 絶望、呆れ、怒り。一緒に住むからには例え血が繋がっていても仕方のない感情だ。

 まあ、何が言いたいかと言うと……

「大地、早く勉強しなさい」

「大地、お前受験生だろう」

 ……親がうるさい。

 わかっている。俺が勉強をすればいいのだ。

 しかし、今は出来ない。理由だってちゃんとある。

 皿洗いだ。

 俺の志望校では寮生活になる為、親に言われて皿洗いや洗濯をしている。

 だからこれも一種の受験勉強であり、親に言われてやっていることなので……

「大地、皿洗いに逃げてないでさっさと勉強しろ」

 こんな事を言われる意味が全く分からない。


「大地も大変だね」

 そう俺に言ったのは妹、中学一年の真恋まこだった。

 真恋は俺を「兄さん」とかではなく、名前で呼ぶ。

「兄貴なめんなよ」

 俺はそう返答し、宿題を続けた。

「お前が兄貴とかマジありえんわ」

 そう言いながら真恋は俺の部屋を出ていった。

 すると、真恋と入れ違いでもう一人の妹が入ってきた。

「大地、頑張ってる?」

 小学四年の真姫まひだ。こいつも俺を名前で呼ぶ。

 真姫は空手をやっていて、同い年の男子よりも喧嘩が強い。武闘派の両親の血を強く引いたのだろう。

「ああ。頑張ってる。頑張ってるからあっち行っててくれないかな?」

 俺は真姫に少し冷たい態度をとった。

「あっそ。折角アイス持って来たのに。あーげない」

「ゴメン。貰う」

「あっ」

 俺はアイスを奪い、袋から取り出すと一口で食べた。

「もう。大地に彼女出来ないのはそういうとこが原因だよ」

「痛いとこつくな」

 小四で彼氏持ちに言われると尚更だ。

「ははは。頑張ってね」

「おう」

 俺の心に傷を付けて真姫は部屋出て行った。

 また入れ替えで入ってきた。

「大地いーー!!」

 四歳の可愛い想奈そなだ。

「大地遊ぼー」

 やっぱり想奈は可愛い。

「ゴメンな。今勉強してるから。また後でね」

 俺が優しく言うと、想奈は大きな声で

「ママぁぁー!大地が遊んでくれなーい!」

 と叫んだ。

「遊んであげなさい!!」

 いや、勉強しろっつったの、紛れもなくあんただろ!!


 これでわかれば嬉しいが、俺の家族はとてつもなくめんどくさい。

 こんな家族だ。絶望、呆れ、怒り。感じたとしてもおかしくない。

 実際に感じている。

 しかし、俺はこんな家族が好きだ。

 俺に感情をいだかせてくれる。俺を人間らしくしてくれる。

 こんな俺でも愛してくれる。そんな家族が、俺は大好きだ。


「そうだ大地。お前いつ死ぬの?」

 ………………

 真恋を除いて。

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