第11話 日本昔話たち
1
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがすんでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へせんたくにいきました。
おばあさんが川でせんたくをしていると、川上から
ドンブラコ、ドンブラコと大きな桃がながれてきました。
「あんれまあ、大きなモモだこと!」
おばあさんは大きな桃をひろいあげると、おじいさんに食べさせたいと、うちへ持ってかえりました。
包丁で桃をまっ二つに切ると、中から元気な赤ん坊がとびだしてきて、おばあさんは腰をぬかしました。
いっぽうそのころ、おじいさんはというと、芝刈りをするために入った山で、1ぽんの光る竹をみつけました。
「あんれまあ、きれいな竹だべ!」
おじいさんはおばあさんのために持ってかえろうと、竹を鎌で割ってみると、中にはとってもちいさい赤ん坊がはいっていました。
おじいさんは、腰をぬかしました。
2
おじいさんがうちにつくと、おばあさんが赤ん坊をあやしていました。
おばあさんが戸のひらくおとでふりむくと、おじいさんが赤ん坊をかかえていました。
おじいさんとおばあさんは、すこしだけ、おたがいが浮気したんじゃないかとおもいましたが、ねんれいのことをかんがえて、おたがいの赤ん坊をひろってきたはなしをきくことにしました。
この赤ん坊たちは、きっと天からのさずかりものにちがいない。
そうおもったおじいさんとおばあさんは、この赤ん坊たちを育てることにきめました。
桃からうまれた男の子には「桃太郎」、竹の中にいた女の子には「かぐや姫」と名づけました。
名づけをおえると、うちの戸ががらっとひらいて、ひげをはやしたひとりのおじいさんが入ってきました。
「父さま、母さま、ただいまかえりました」
ひげをはやしたおじいさんはいいました。
おじいさんは、ひげをはやしたおじいさんにききました。
「いったいだれだい?おまえさん」
「太郎です。父さま、あれからどれだけのじかんがたったのかわかりませんが、るすをおゆるしください。」
ひげをはやしたおじいさんはつづけます。
「浦島太郎です。父さま、母さま、あの日わたしは、いじめられたカメをたすけて、りゅうぐうじょうへしょうたいされました。そこでもらった玉手箱をあけたところ、このようなすがたに変えられてしまったのです。」
おばあさんは驚きのあまり、口をあんぐりあけたままです。
ひげをはやしたおじいさんはおいおいと泣いていました。
おじいさんは、しばらく天井をみつめていましたが
「よし!」
とおおきなこえでさけぶと、みんなにこう言いました。
「みんな!いったん、今日は寝よう!またあした、話しあおうじゃないか。」
みんなはなっとくして、その日は早めに明かりをけしました。
3
つぎのひのあさ、おじいさんとおばあさんがおきると、桃太郎とかぐや姫はすっかり大人のすがたになっていました。
みんなは朝ごはんをかこんで、話しあいをはじめました。
「おじいさんおばあさん、ぼくには鬼ヶ島に行って、にっくき鬼をたいじするというしめいがあるのです。」
桃太郎がいいました。
「おじいさんおばあさん、わたしは月にかえらないとならないのです。」
かぐや姫がいいました。
「父さま、母さま、わたしはこの先の人生どうやって生きていったらいいのでしょうか。」
浦島太郎がいいました。
「・・・みんな、一旦しずかにできるか。」
おじいさんが、ひくい声でちいさくいいました。
「そう、みんな、じぶんのことばかりね。そういう性格のもちぬしたちをひろってしまったということね。りかいしたわ。」
おばあさんは、とおくをみつめながらいいました。
とてもしずかな朝ごはんのじかんがながれていると、とんとんと戸が叩かれました。
「ごめんください。」
戸のむこうからこえがします。
おじいさんが代表して戸をあけると、そこにはだれもいません。
とおもったら、そこにはかにの子供たちがいました。
ほかにも、いが栗もいましたし、石臼(いしうす)もいましたし、はちもいましたし、
牛のくそもいました。
かにの子供たちは口々にいいました。
「ぼくたち、おかあさんをわるい猿に殺されちゃったんだ」
「ここにいるみんなも、わるい猿にいじめられているんだ」
「仕返しをしたいけれど、ぼくたちがかくれる場所がないんだ」
「だからお願いだよ、ここにしばらくかくれさせてほしいんだ」
おじいさんは、ゆっくり戸をしめようとしましたが、かにの子供たちが戸を押さえました。
おじいさんはいいました。
「いったん、戸を閉めてもいいかい?」
「どうして?」いが栗がききました。
「君たちにきょうりょくするかどうか、考えさせてほしいんだ。」
「でも、はやくしないとまたあの猿にいじめられちゃうよ!」石臼(いしうす)がいいました。
「うん、でもこっちもそうとう、立て込んでるんだ。」
「おねがいだよ、優しいおじいさん。いましかないんだよ」はちがいいました。
「復讐は何も生まないよ。」
おじいさんは、ちょっとかっこつけました。
牛のくそがちょっとくさくなりました。
そのとき、桃太郎がいいました。
「おじいさん、助けてあげましょうよ。ちょうど、猿をけらいにしようとかんがえていたんです。ちょうどいいじゃないですか。」
「…鬼でもおもいつかない再利用だ。」
おじいさんは、昨日のことをすこし後悔しました。
4
おじいさんたちが協力したおかげで、わるい猿はぶじにこらしめられ、もうにどと悪さはしないと、かにの子供たちにちかいましたが、そのはなしはここでは省略します。
わるい猿は、桃太郎のけらいになりました。
浦島太郎は、うちにいても、疎外感ばかりかんじていたため、猿への復讐にはさんかせず、50年の月日がたったじもとを、あるいていました。
浦島太郎にとっては、つい昨日のことなのですが。
山のふもとまでやってくると、むかし父さまといっしょに、狩りをしたおもいでがよみがえってきて、なんだか泣けてきました。
あのころ、じぶんにむけてくれていた優しい目は、もう父さまはむけてくれません。
母さまも、浦島太郎が近くにすわると、すんと立ち上がって、すこしはなれたところにすわるのです。
浦島太郎は、涙がこぼれないように、上をむいてあるきました。
そのとき、遠くから鳥の鳴き声がきこえました。くるしそうな鳴き声です。
鳴き声のするほうにいってみると、一匹の鶴が、わなにかかってくるしそうにもがいていました。
「おまえもかなしいのか。」
浦島太郎は、鶴のきもちがわかってしまい、悲しくてやりきれないきもちになりました。
浦島太郎が、鶴をわなからたすけてあげると、鶴はぴゅうっと泣いて、西のそらにとんでゆきました。
いいことをした浦島太郎は、すこしすがすがしい気持ちになって、おうちにかえりました。
5
そのよる、また戸がとんとんとなりました。
おじいさんが戸をあけると、とても美しい娘がやってきて、お礼に着物を織らせてくれとおねがいをしましたが、全員なんのことか全く心当たりがありませんでした。
でも、たてつづけにへんなことばかりおきているので、おじいさんはかんかくがまひしており、娘のいうとおりに機織り機をかしてあげました。
ここからの流れは、いろいろあるのですが、省略します。
けつろんとして、鶴は桃太郎のけらいになりました。
鶴の織った着物は、かぐや姫がもらい受けました。
きれいな着物をまとったかぐや姫は、つぎの十五夜に月にかえるとおじいさんとおばあさんに伝えました。
浦島太郎と鶴の娘は、おたがいが惹かれあい、けっこんすることになりました。
おじいさんとおばあさんは、なるべくはやくみんなに出て行ってもらいたいと、筆談でかいわをしていました。
浦島太郎と鶴の娘がとんとんびょうしにけっこんしたのは、そのためです。
ひつよういじょうにはやしたてて、浦島太郎と鶴の娘の関係を加速させたのです。
おじいさんは、山にしばかりにいったときに、偶然にも背中が燃えてこまっているたぬきをみつけました。
たぬきはひんしのようすで、今にもしにそうでした。
ここからの流れは、いろいろあるのですが、省略します。
おとなのじじょうというやつです。
けつろんとして、たぬきは桃太郎のけらいとなりました。
桃太郎は、浦島太郎にあいさつをしたあと、たぬき、鶴の娘、わるい猿を引きつれて、鬼退治へとむかいました。
さわがしかったおじいさんとおばあさんのうちに、ひさしぶりのへいおんがとずれました。
おじいさんとおばあさんは、ひさしぶりにいっしょのふとんでねることにしました。
「ねえ、おじいさん」
「なんだい、おばあさん」
「あしたは、せんたくもしばかりもやめて、二人で花見にでもでかけませんか」
「そうだな、それがいい」
それからおじいさんとおばあさんは、仲良く暮らしましたとさ。
浦島太郎は、鶴の娘をまっているあいだに、寿命がきてしまい、うちのなかで息を引き取りましたとさ。
かぐや姫は、特に何の問題もなく、十五夜の夜に月へかえっていきました。
桃太郎は、鬼退治へとむかいましたが、せんりょくぶそくや、けらいのモチベーション不足、なかまのうらぎりもあり、鬼ヶ島で血だらけのまま、目をつぶり、そのままうごきませんでしたとさ。
牛のくそは、ちょっとくさくなくなりましたとさ。
めでたし、めでたし。
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