中華人民共和国――山東省

泰山地下

 所は中国。様々な神像や掛け軸の並ぶ、薄暗い一室。


部下「……強大な霊波Líng bōですね」

長官「どこだ?」

部下「日本Rìběnです。関東近郊のようですが」

長官「いつ以来になるかな、四神太極盤Sì shén tàijí pánが異国に反応を示したのは」

部下「我が国でも、ここまでの霊波は滅多に発生しません。ともすれば、観測開始以来初かもしれませんよ」

長官「そんなにか」

急使「長官Zhǎngguān竹聯幇Zhú lián bāngより急報です」

長官「どうした」

急使「日本において、十種の神宝Shí zhǒng shénbǎoが盗まれたとのこと」

長官「何? 十種全部がか?」

急使「そのようです」

長官「いつの話だ、最近か?」

急使「いえ、発覚したのはつい先程のようですが、被害に遭ったのはどうやら一ヶ月も前のことらしく」

長官「そんなに前なのか。だとすると、今回の霊波とは直接関連はなさそうだが」

急使「判りませんね。裏で何か繋がりがあるのかも」

長官「だな。引き続き情報を集めてくれ」

急使「はっ、失礼します」

部下「……長官は、逐電士Zhúdiàn shìの件はご存じなのですか?」

長官「逐電士だと? まさかこの一件、逐電士が絡んでいるというのか」

部下「いいえ、確証はありません。ですが、ここ数日、方々からその名を耳にするもので」

長官「うむ、そうだな。念のため、冷艶鋸Lěng yàn jù点鋼矛Diǎn gāng máoの護衛を増員させておくか」

部下「一体、かの国で何が起きているのでしょうか」

長官「いずれ、腕利きを何人か向かわせることになるやもしれんな」

部下「我らが祖・徐福Xúfúが赴いたとされる、かの国にですか……」

長官「行きたいか、長生Chángshēng? 美髯公Měirán gōng關聖帝君Guān shèngdì jūnの名を継ぐ者よ」

部下「しかし、不勉強なもので、かの国の言語を存じません」

長官「言葉ではない。情熱だ。徐福もその行動力の根柢にあったのは、あくなき探求心、そして情熱だったのだぞ」

部下「……冷艶鋸を、お借りしてもよろしいでしょうか」

長官「構わんよ。お前以上にあれを使いこなせる者などおらんしな」

部下「ありがとうございます」

長官「だが、引き継ぎはちゃんと済ませておけよ。俺には太極盤の見方なぞさっぱりだからな」

部下「了解しました」

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