奇妙な魚(お題制作)

 金魚

 と聞くと、優雅に長い尾鰭を翻して泳ぐ姿を想像するものだが、友人が愛でている、らんちゅうという品種は少し違っていた。

 まず体つきが金魚という言葉から想起される少し三角形にも似たあの形ではなく、ずんぐりむっくりという形容がぴったりな丸っこい形をしている。背鰭はなくつるりとしていて見ているうちに指でそっと撫ぜたくなる。尾鰭は短くちょこんと付いていて、全体的に丸さが強く印象に残る姿だ。

 そして何やら頭がぼこぼことしている。このコブが頭をますます丸く見せ、哺乳類を想像させる姿にしている。

 「なんだってそんな奇妙な金魚が好きなんだい」

 友人は金魚鉢の丸みに指を沿わせながら、肩を揺らした。

 「馬鹿だな。金魚はそもそも奇妙だよ。君、知ってるかい。金魚は何もしないままでは、世代を経て鮒の形に戻ってしまうんだよ」

 「そうなの。金魚はずっとそのままだと思っていたよ」

 「針の穴を通すように掛け合わせていかなければ保てない歪な姿なんだよ。だから金魚はそもそもが奇妙な生きものなのさ」

 らんちゅうが健気な様子で水中を泳ぐ。きっと自然界とやらに放してしまったら、あっという間に他の生き物の糧にされるだろうなと思わせる不器用な仕草だ。

 「金魚のバリエーションは人間の妄執の表現のようで、好きだな」

 笑う友人の瞳は捕食者の色を浮かべていた。

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