其の二

 カルタ取りとおやつとお茶の準備がすんだころ、タイミングよく、クマパンちゃんが帰って来た。

 

 「ただいまぁ、ミケちゃん。チャコマロンちゃんたち、呼んできたよ」


 「おかえり、クマパンちゃん。いらっしゃい、チャコちゃん。あっ、コンちゃんもいっしょだ!」


 コンちゃんはね、チャコマロンちゃんのおともだち。クマパンちゃんと同じぬいぐるみなの。クマパンちゃんはクマのぬいぐるみだけど、コンちゃんはきつねのぬいぐるみ。あたしとクマパンちゃんみたいに、ふたりはとっても仲良しなんだ。


 チャコマロンちゃんたちの後ろから、犬のパロさんとペロさんが顔を出した。ペロさんとパロさんは、いとこ同士。双子みたいに、そっくりなの。だから、時々、ううん、しょっちゅう、まちがえちゃう。


 「ミケちゃん、こんにちワン」


 「パロさん、ペロさん、こんにちニャア」


 「クマパンちゃんに聞いたんだけど、おかし食べながら、カルタ取りするんだってね。ぼくたちも、まざっていい?」


 「まざって、まざって!」

 

 チャコマロンちゃんの他に、コンちゃんやパロさんペロさんもきてくれたんなら参加者多数で、大会になっちゃうね。


 「それでは、皆さん、カルタ取り大会会場に、お入りください!」


 「おじゃましまーす」


 あたしは、みんなを、準備万端の大会会場に案内しました。

 大会会場っていっても、あたしのお部屋なんだけれど。


 「わぁ、チャコちゃんだけじゃなくて、みんな、きてくれたんだ!」

 きつねこちゃんも、大喜び。



 さて、カルタ取り大会一回戦。

 まずは、読み手を決めましょう。

 じゃんけんぽん!

 ひとりだけ、パーを出したあたしが、読み手。

 あとのみんなは、当然、グー。

 何と言っても、あたしたち、グーとパーしか、出せないからね。


 それでは、始めます。


 「いぬもあるけば、ぼうにあたる」


 あたしが最初の読み札を読み上げると、すかさずパロさんが挙手したの。

 「ミケちゃん、異議あり!」


 異議ありって、何が?

 カルタ取りって、読み札を読み上げたら、取り札を見つけて取る遊びじゃなかったけ?


 三毛猫ミケ

 (続く)




***




 いろはカルタのいろは。

 『いろは』は、いろは歌の最初の三文字です。 

 いろは歌は、仮名47文字を1回づつ使って作られた歌。

 

 いろはにほへと

 ちりぬるを 

 わかよたれそ

 つねならむ

 うゐのおくやま

 けふこえて

 あさきゆめみし

 ゑひもせす


 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず


 平安時代後半に成立したとされています。

 仮名文字を覚えるための手習い歌として、長く用いられてきました。


 今なら、あいうえおですね。


 いろは歌の他にも、仮名47文字を1回づつ使った歌に「あめつち」があります。いろは歌より古いとされる平安初期の手習い歌です。

 

あめ(天)つち(地)ほし(星)そら(空)やま(山)かは(川)みね(峰)たに(谷)くも(雲)きり(霧)むろ(室)こけ(苔)ひと(人)いぬ(犬)うへ(上)すゑ(末)ゆわ(硫黄)さる(猿)おふせよ(生ふせよ)えのえを(榎の枝を)なれゐて(馴れ居て)


 天、地、星、空とつぶやいていると、自然の雄大な風景が広がっていくようですね。

 だけど、犬や猿や人はいるのに、残念ながら、あめつちの歌には猫がいません。


 を合わせれば、になるのになって思う水玉猫なのでありました。

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