お年始迷子のウリ坊ちゃん
「ミケちゃん、お年始に、だれかきたの?」
クマパンちゃんが、お昼寝から起きてきた。
「あれ?ウリ坊だ」
「クマパンちゃん、この子、知っているの?」
なんだ、クマパンちゃんの知り合いなのね。
「ううん。知らないよ」
「だって、今、ウリ坊って言ったじゃないの」
「ウリ坊って、イノシシさんの子どものことだよ。名前じゃないよ。ぼくのぬいぐるみ仲間にも、ウリ坊のぬいぐるみがいるんだ。で、どうして、この子、泣いているの?」
「それがね」って、言いかけると、ウリ坊は、あたしを指差して告げ口するみたいにクマパンちゃんに言ったの。
「三毛猫さんが、意地悪ばかり、言うんです〜」
ちょっと、ちょっと、人聞き、猫聞き、ぬいぐるみ聞きの悪いこと言わないでよ!
「ミケちゃんたら、お正月そうそう意地悪して、ウリ坊、泣かせちゃだめだよ」
ほら、クマパンちゃんに言われちゃったじゃないの。
「あたし、意地悪なんて言ってないよ、クマパンちゃん」
「言ってますよ! 三毛猫さんたら、知ってるくせに、はぐらかしてばっかりで、ちっとも連れて行ってくれないんです〜」
「ほら、ウリ坊がそう言ってるじゃないか。ミケちゃん、どうして、連れて行ってあげないの?」
「だって、知らないんだもの。知らないところになんて、連れていけないよ。あたしもウリ坊も、ふたりとも、迷子になっちゃうよ!」
「迷子? 迷子なの、この子?」
「うん。なんか、それで、わたしに、うりどしに連れて行ってくれって言うんだけど、あたし、うりどしなんて、どこにあるのか知らないし……」
「うりどし?」
「そう、うりどし。クマパンちゃん、どこなのか知ってる?」
「うり……瓜畑とか?」
「って、思うでしょ。でも、違うのよ」
「うり……売りで、なんかのお店?」
「それも、違うんだって。迷子なら、交番行こうって言ったら、泣き出しちゃったの」
あたしとクマパンちゃんが話していると、
ドドドドォードドドドォードドドドォー
なに? なに? なに?!
向こうの道からすごい音を立てながら、砂煙がこちらに突進して来るよ!
あまりの突然の出来事に足がすくんで、あたしとクマパンちゃんは、逃げるに逃げられない。
それなのに、ウリ坊ったら、あたしが引き止める間も無く、その砂煙に向かって突進して行っちゃった!
ダメよ、ウリ坊! 蹴散らされて、怪我しちゃうよぉぉぉ!
三毛猫ミケ
(続く)
***
迷子のウリ坊ちゃん、どうなってしまうんでしょう?
お正月の遊びの中に、家出猫や迷子猫のおまじないに使われているものがあるんですよ。有名なので、ご存知の方も多いんじゃないでしょうか。
それは、百人一首の中の在原行平の歌。
「立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」
この和歌を書いて、玄関の柱に貼ったり、猫のごはんのお皿を伏せてその下に置いておくと、迷子や家出中の猫が帰ってくるというおまじないです。
内田百間「のらや」にも、このおまじないが登場します。
家出や迷子の猫が帰ってくるおまじないには、ご近所のボス猫に「うちの猫に早く帰ってくるように伝えてください」と頼むというのもあります。
だけど、そのボス猫もお外にいないで、すぐにおうちに帰った方がほうがいいなと思う水玉です。
もし、帰るおうちがないのならば、早く安心できるおうちが見つかるようにと、願わずにはいられません。
今は、猫にとって、お外は危ないことがいっぱいですものね。
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