お年始迷子のウリ坊ちゃんの名前はウリン
ドドドドォードドドドォードドドドォー
ものすごい砂煙をあげて突進して来たのは、おっきなイノシシさんだった!
ウリ坊ったら、それに気がつくや否や、イノシシさんに向かって走って行っちゃったのよ!
ウリ坊! 早く、よけて!! 踏み潰されちゃうよぉ!!!
だけど、心配は無用だった。
おっきなイノシシさんは急ブレーキをかけて止まると、突進して来たウリ坊を抱きしめたの。
「ウリン、こんなところにいたのか! 心配して探したんだぞ!
「とうさま〜」
とうさま? このイノシシさんが、ウリ坊のおとうさんなの?
それなら、よかった!
あたしもクマパンちゃんもイノシシさんに蹴散らされずにすんだし、迷子のウリ坊におとうさんのお迎えがきたんだし。ああ、よかった。一件落着よね!
イノシシさんは、あたしたちの方を見て、頭を下げた。
「うちのウリンがお世話になったようで、三毛猫さん、クマのぬいぐるみさん、ありがとうございます」
「とうさま〜、お世話になってなんかいないよ〜。ぼく、三毛猫さんに意地悪されて、泣いてたんだもの〜」
「意地悪された?」
ちょっと、ちょっと、ウリ坊、また、そんなイノシシ聞きの悪いことを言う〜。
いのししさんは、たちまち、険しい顔になった。
こわっ!
「ウリン、どんな意地悪をされたんだ?」
「あのね、とうさま。ぼく、うりどしはどこですかって何度もきいてるのに、三毛猫さん、知ってるのに、しらばっくれて、意地悪するの〜」
「うりどし? ウリン、なんだ、それは?」
ほらぁ、ウリ坊のウリンちゃん、おとうさんだって、知らないよ〜。
「三毛猫さんは、知っているんですか?」
イノシシさんがギラッと光る目であたしを見たけど、イノシシさんの知らないことを、あたしが知るはずないじゃない。
だから、あたしは、首を横に振った。
そしたら、ウリ坊は、口を尖らせて言ったのよ。
「だって、とうさま、イノシシの
えっと……うりどしって、ウリ坊のうり年ってことだったのかな? かな??
「ウリンよ。うり年など、ウリンが考え出したことではないか。三毛猫さんが知っているはずがないだろう。嘘など、ついてはいかん。いいか、ウリンも父と同じ、イノシシなんだぞ。
「違うよ、違うよ! 嘘じゃないよぉ〜。うり年はあるんだよぉ〜。三毛猫さんは、知っているよぉ〜! 三毛猫さんは、ぼくがうり年どこですかって聞くたびに、
「ちょっと、ちょっと、ウリ坊のウリンちゃん、違う、違う! わたしの言ったのは『えっと』で、干支じゃないよ!」
クマパンちゃんは笑いをかみ殺して肩が震えているし、いのししさんは苦笑い。
「嘘だよぉ〜。三毛猫さんが、嘘をついているんだよぉ〜。三毛猫さんが言っていたのは、干支だもん! 三毛猫さんは、うりどし、知ってるもん!」
「嘘をつくのはいけないが、
「おとうさまの
ウリンちゃんたら、ひっくり返って、バタバタ暴れて駄々をこねている。
とんだ駄々ッ子だわね。
イノシシさんは、泣き叫ぶウリンちゃんを前に手のつけようもなく、ほとほと困り顔。
イカツイ顔に似合わず、イノシシさんたら、息子には甘々さんなのね。
でも、どうしよう。
「ねぇ、クマパンちゃん……、あれっ、いない? クマぱんちゃんたら、どこ、逃げた?」
三毛猫ミケ
(続く)
***
ウリンちゃんのとうさんはイクメンだけれど、野生のイノシシは雌が子育てをし、雄は単独行動をします。
そう考えれば、イノシシとうさんが駄々ッ子に手こずっているのは、仕方ないといえるかもしれませんね。
ミケちゃんとクマパンちゃん、わがまま駄々ッ子を、どうなだめて笑顔にするのか?
次回、お手並み拝見といきましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます