メリークリスマス!

 クリスマスの朝。


 チーム222がもどると、おじいさんが笑顔で出迎えてくれました。

 「メリークリスマス、ミケちゃん! メリークリスマス、きつねこちゃん! ご苦労だったね」 


 「メリークリスマス、サンタクロースのおじいさん」


 「どうしたんだい、ふたりとも。浮かない顔して。そんなに疲れたのかい」


 「おじいさん、おたずねしたいことがあるんです」

 あたしは、思い切って言いました。


 「わたしにききたいことがあったら、何でも聞いておくれ、ミケちゃん」


 「クマパンちゃんのことなんです。プレゼントのリストにクマパンちゃんの名前、乗ってなかったんです」


 「ああ、そのことか、それで?」

 どうやら、おじいさんは事情を知っているようです。


 きつねこちゃんも、たずねました。

 「プレゼントを全部配り終わった後、トナカイさんたちに頼んで、クマパンちゃんのおうちをのぞいてみたんですけど、いなかったんです」


 おじいさんは優しい笑顔で、あたしたちの話を聞いています。


 「あたしがクリスマスに何がほしいのか聞いても、クマパンちゃん、教えてくれなかったんです。サンタクロースさんとの秘密だって。おじいさん、クマパンちゃんのほしいもの、知っていますか?」


 「もちろんだとも、ミケちゃん。ちゃんと、知っているよ」


 「だったら、どうして、クマパンちゃんにはプレゼントが、なかったんですか」


 「クマパンちゃんはね、テディベアだ。テディベアが一番何を望んでいるのか、何がほしいのか知っているかい?」


 「いいえ」


 「きつねこちゃんは?」


 きつねこちゃんも、首を横に振りました。


 「プレゼントになることさ、大切なプレゼントにね」


 「えっ!」

 あたしときつねこちゃんは、驚いて、顔を見合わせました。


 「それじゃ、クマパンちゃん、誰かのプレゼントになっちゃったんですか!」


 「そうだよ、ミケちゃん」


 だから、クマパンちゃん、部屋にいなかったんだ。

 あたしは知らずに、クマパンちゃんを誰かにプレゼントしちゃったんだ。

 もう、クマパンちゃんには会えないかもしれない。

 もう、クマパンちゃんと遊べないかもしれない。


 きつねこちゃんが慌てて、サンタクロースさんにたずねました。

 「おじいさん、プレゼントを返してもらうとか、交換するとかはできないんですか」


 「できないね」


 それを聞くと、あたしは涙がこぼれてきました。


 「ミケちゃん、泣かないでよ」

 クマパンちゃんの声がします。


 そんなはずない。クマパンちゃんは誰かのプレゼントになっちゃったんだもの。

 きっと、空耳……。


 「ミケちゃん、今、クマパンちゃんの声、聞こえなかった?」


 あれっ?きつねこちゃんにも聞こえたの?

 だったら、空耳じゃない?


 おじいさんが、言いました。 

 「そしてね、テディベアが一番ほしいプレゼントはね、プレゼントされたひとのとびっきりの笑顔さ」


 おじいさんはあたしの頭のサンタクロースの帽子を、とりました。


 「メリークリスマス! ミケちゃん! メリークリスマス! きつねこちゃん!」

 帽子の中から、新しい赤いリボンをつけたクマパンちゃんが飛び出してきました。


 「クマパンちゃん!!」


 「ミケちゃん、クマパンちゃんはね。クリスマスのプレゼントになって、ミケちゃんのとびっきりの笑顔がプレゼントにほしいと、わたしに頼んだんだよ」


 「わぁ、すてき!よかったね、ミケちゃん!」


 「きつねこちゃんへのプレゼントは、パーティ会場にちゃんと用意してあるからね」


 きつねこちゃんがおじいさんを見上げました。

 「サンタクロースのおじいさん、わたし、もう、プレゼントもらいました。ミケちゃんの笑顔とクマパンちゃんのサプライズ!」


 「ハハハ、大好きなひとの笑顔はいちばんのプレゼントだからね。きつねこちゃんのその気持ちは優秀なサンタクロース候補生が抱くものだ。やがては、正式にうちに来てもらおうかな」


 「すごーい!きつねこちゃん!」


 「その時は、おじいさん、ミケちゃんもいっしょに」


 「ハハハ、そうだね、そうしよう」


  

 そのあと、あたしたちは、おじいさんのおうちで、他の猫の手バイトのみんなやトナカイさんたちといっしょにクリスマスパーティをしました。


 三毛猫ミケ

 



***




 メリークリスマス!


 ミケちゃんたらクマパンちゃんのプレゼントに驚いて、どうしてきつねこちゃんがヴィクセン役じゃなくてルドルフ役なのか聞くのをすっかり忘れちゃったようです。


 だから、水玉猫が解説しますね。

 ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッツェンという名前のトナカイたちは、1823年にアメリカの新聞に匿名で投稿された詩『サンタクロースが来た(A Visit from Santa Claus)』の中で、はじめて登場します。

 その後、1939年にロバート・L・メイが童話『ルドルフ 赤鼻のトナカイ(Rudolph, the Red-Nosed Reindeer)』を発表し、前述の8頭のトナカイの先頭に、ルドルフが先導役として立つことになりました。

 

 だから、先導係のきつねこちゃんは、ルドルフ役のアルバイトって言ったんですね。


 よいこのみなさんのところには、サンタクロースさんから、プレゼントは届きましたか。

 もしかしたら、昨夜プレゼントを持ってきたのは、ミケちゃんサンタときつねこちゃんルドルフだったかもしれませんよ。

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