かくれんぼ日和

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 今日、あたしは、朝からずっと???ばっかり。


 きつねこちゃんとチャコマロンちゃんと、さっきまで、遊んでいたんだけど、なんか、ずっと???

 それで、落ち着かなくて、先に帰って来ちゃった。


 何が???かって、いうとね。


 クマパンちゃんがトコトコ歩いてきたような気がして、振り向くでしょ。

 でも、だあれもいない。

 

いつもなら、「おはよう、ミケちゃん。今日は、何して遊ぶ?」って、クマパンちゃんがやってくる時間になっても、いっこうに現れない。


 だからといって、クマパンちゃんがどこにもいないって感じはしないの。

 気配は、すぐ近くに、するのよね。


 うーん。

 だから、余計に???ってなるわけ。


 帰り道、クマパンちゃんによってみたけど、留守るすだったし。


 あたしが???って、振り返り振り返り、家に帰ってみたら、郵便受けから、何か、はみ出ている。

 

 引っ張り出してみたら、大きな封筒の表に『ミケちゃんさま』って、見覚えのある字。

 切手が貼っていないから、直接、郵便受けに入れたのね。


 開けてみたら、折り紙で作ったおひな様と、メッセージカードと猫用おやつのチューブが3本。

 折り紙のおひなさまは、なんだか、どこかで見たことがある。

 きっと、あたしの恩人、やすらぎさんと奥さんがモデルなのよ。

 フフフ。かわいい。


 カードには、封筒の宛名あてなと同じ字で、




 ミケちゃんさま


 チョコレート、ありがとうです。

 ミケちゃんが、きつねこちゃんとチャコマロンちゃんと三人官女になれるように、おだいりさまを作りました。

 きつねこちゃんとチャコマロンちゃんとで、食べてください。


 追伸ついしん

 きつねこちゃんとチャコマロンちゃんと食べるのは、おやつです。

 おだいりさまは、食べないでください。


 追伸の追伸。

 ミケちゃん、おやつはひとりで、全部食べないでください。

 きつねこちゃんとチャコマロンちゃんで、分けて食べてください。




 と、書いてあったんだけど。

 失礼ね!

 あたし、おやつの独り占めなんてしないわよ!


 失礼な追伸の追伸なんか書くくらいなら、ちゃんと、差出人の名前を書いてほしいわ。

 カードにも封筒にも、差出人の名前は、どこにもないの。

 だけど、字を見れば、誰が書いたのかは、わかるけれどね。


 あたしが、ふと、顔を上げると、クマパンちゃんが、慌てて、逃げていく後ろ姿……。

 ほんと、恥ずかしがり屋さんなんだから。

 あたしは、逃げていくクマパンちゃんに聞こえるように言いました。


 「クマパンちゃん、ありがとね!明日は、みんなでかくれんぼして遊ぼう!」

 きっと、クマパンちゃんは、かくれんぼ、得意のはず。

 今日、わかったもの。


 旧暦の3月3日は、2018年だと4月18日。

 だから、あたしときつねこちゃんとチャコマロンちゃんのおひな様ごっこは、まだまだ絶賛続行中ぜっさんぞっこうちゅうです。

 


 三毛猫ミケ




***




 3月14日は、ホワイトデー。

 ホワイトデーは、20世紀後半から始まった最近の習慣です。


 3月14日を、二十四節気にじゅうしせっきでみれば、啓蟄けいちつ(3月6日頃)と春分(3月21日頃)の間。


 二十四節気は、古代中国で考案されました。一年を24等分して、その時々の季節を表す言葉をつけたものです。

 ホワイトデーと違って、長い歴史があります。


 啓蟄は、冬ごもりしていた虫や蛙や蛇が、そろそろ穴から出てくる頃という意味。 

 春分は、昼と夜の長さがほぼ同じ日。

 春分の日は祝日だし、おなじみですね。

 他にも、二十四節気の中には、今でもよく使う夏至げし冬至とうじも入っています。


 二十四節気の一つ一つを、さらに、初侯しょこう次侯じこう末侯まっこうの三つに分けたものが、七十二候しちじゅうにこうです。

 24×3は72。だから、七十二候。


 あんまり馴染なじみがないような二十四節気と七十二候ですが、「気候」という言葉は、二十四節気の「気」と七十二候の「候」からできているんですよ。


 啓蟄の初侯は、蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)3月5日頃〜9日頃。

 冬ごもりしていた生き物が姿を現わす頃という意味です。


 次侯は、桃始笑(ももはじめてさく)3月10日頃〜14日頃。

 桃の花が咲き始める頃という意味。


 末侯は、菜虫化蝶(なむしちょうとなる)3月15日頃〜19日頃。

 菜を食べる青虫が、蝶になる頃という意味です。


 なので、3月14日は七十二候でいえば、桃始笑(ももはじめてさく)の頃になります。


 でも、どうして、「ももはじめてさく」なのに、桃始「咲」ではなくて、桃始「笑」になっているんでしょう?

 それは、「咲」と「笑」という漢字が、もともとは同じ字だったからなんです。


 厳しい冬を耐えた花には、「笑」の字が似合います。

 辛い冬は、もう終わり。

 辛いことも、もう終わり。

 花が咲くように笑ったら、明日は紋白蝶になって、青空に、軽やかに飛び立っていけたらいいな。

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