第6話完成されたあなた

彼女が僕の部屋に迷い込んだのは ほんの数日前の話だ


彼女は窓際がお気に入りでずっと窓辺から離れようとしない


僕がどんなに誘っても見向きもしない


でも彼女は幸せそうに外を眺めているから


僕もそれで幸せを感じるんだ


僕は学生だからお昼はいつも留守にする


彼女は心細くないか  寂しくないか とても心配だけど


行かなければ僕の将来が危ないから


「すぐに帰って来るからねっ」と彼女の寂しい顔を振り切って家を出る


毎日  毎朝


学校に居ても気が気じゃない


帰ったら泣いているんじゃないか?


もしかしたら・・・いなくなっているんじゃないか?って


でも彼女は僕を置いて出て行ったりはしなかった


僕は彼女の成長を楽しんでいた


いつか美しく咲き誇る事を信じてその時を待っていた


彼女は何も言わず ただ表情で感情を表していた


寂しさや嬉しさが彼女から伝わって来ると


僕はどうしようもなく彼女が愛おしくなった


そしてほんの数分前 彼女の成長は完成した


しかし彼女は・・僕の大事な彼女は


醜い虫に食い荒らされて無残に死んでいた


彼女の中から飛び出した醜い虫は部屋中を飛び回り


我が物顔で僕に近づいてきた


僕の足下にその醜い虫はバラバラに壊れて落ちている


彼女は死んだ  この醜い虫に体内を喰い尽くされて


極彩色のその羽は毒々しい女を連想させた


僕の愛した白くて繊細な糸に包まれていた彼女は見せかけだったのか?


僕は羽をつまんで持ち上げた


光に当たって色が交差している  美しい・・・


僕はその羽を机にしまった


彼女は成長を遂げたのだ


そしてその成長は僕の手によって完璧な物となった


僕の美しいあなた・・・










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