第5話自由への扉

屋上が一番好きだった


学校と言う名のオリの中で唯一の可能性があると思える場所だったから


そう言う場所があるとオリから獲物が逃げると考えたのか


監視者たちはそこへの入り口を重く閉ざした


監視者たちは知らないのだろう


本当に逃げようとしている者がそんな障害を恐れない事を


だから私はいつも億票と言う所へ逃げ込んだ


私しか知らない秘密の入り口で


いつだっただろういつも通り屋上から外の世界を眺めていた時アイツがやって来た


恐ろしかった、私しか来る事の出来ない屋上へアイツが入って来た事


そしてアイツは監視者であった事


アイツは私に笑いかけた  とても危険な感じがした


子のオリの中で笑うと言う行為はタブーな気がした


そんな物はオリの中で生きて行くのに必要無かった


反対に危険なものだった


私は逃げた 必死に


アイツの顔がチラッと目をかすめた


私と同じ逃げたがる獲物の目をしていた気がした


それから少しの間私は屋上に行くことをためらっていた


行ってはいけない気がした


それから時が過ぎ暦が変わったころ


私はどうしても屋上に行きたくなった


もうアイツは居ないだろうそう自分に言い聞かせながら階段を見上げた


せまく暗い階段が好きだった


最後の可能性と希望wp残した場所への道だから


風は柔らかく吹いていた  髪が顔へまとわりついた


そこにはアイツがいた


目を離すことも逃げることも出来なかった


アイツは私を待っていた・・・そう確信していた


アイツは笑った  私も笑った


「マッテイタンダ・・・キミヲ」


「シッテル」


「ニゲルコトガデキルンッダ」


「フタリナラ・・」


アイツは笑いながら頷いた


外の世界はとても明るく輝いていた


アイツは私に手を差し出した 私はそれを素直に受け入れた


ゆっくりと歩き出す 自由の世界のある方へ


あと少し・・あと少し・・オリの隙間をかいくぐって


私とアイツは外の世界へ出て行ける


2人は足を止め顔を見合わせた そして飛び立った


屋上から


私は自由になったオリから逃げる事の出来た獲物


アイツは自由になった オリから逃げた監視者


2人は自由になった


そして屋上への扉はさらに重く閉ざされた

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