43 炸裂大螺旋
「
嵐剣丸がギガラニカの体内から脱出して間もなく、
「ギョエエエエエエエ!」
堪え切れず嘔吐。
鯱の口から白い灰が滝のように流れ出す。
「“再生”は打ち止めだな?」
「おのれ……ただのラ=ズごときの寄せ集めに……
激昂したギガラニカが左の巨腕を振るう。
虎珠皇より数倍大きな拳が迫る。あまりのサイズ差に、虎珠と旭の目には敵の拳がゆっくりと近づいて見えた。
「
虎珠皇が全身のドリルを廻し、
ドリルによって描かれた
炎の壁にせき止められるも、ギガラニカは力任せに拳を押し込んでくる。
「お得意の搦め手もネタ切れか?」
不意に、炎の抵抗が消滅。
振りぬいた拳の勢いで体勢を崩すギガラニカ、その頭上には一瞬で移動を終えた虎珠皇!
身にまとっていた炎が虎珠皇の白銀の身体に吸い込まれる。
先の攻防で
虎珠皇の表面温度が急激に下がっているのだ。
「
ギガラニカがアッパーカットの体勢で右の拳を突き上げる。
虎珠皇は一切の焦りも狼狽えもなく迫る拳を見下ろして、両腕のドリルの回転数を更に上げ。
ドリルの回転音が人間の可聴域を超えたとき、螺旋の刃が黒く染まった!
周囲の光をを完全に吸収した
「オラァ!」
気迫と共に、虎珠皇は真下へ――ギガラニカの拳へ短い両足を向けたまま“落下”した。
身の丈30メートルをほこるギガラニカの拳に、凄まじい衝撃が伝わった。
虎珠皇はそのままギガラニカの右腕を貫通。
着地と共に巻き上がる砂塵の中へ、もぎ取れ灰の塊となった右腕が落ちていく。
「身体の質量を増やしたのかッ!」
「もう
虎珠皇の全身で回転するドリルは、その力を全身へと巡らせている。
師たるレムリアから受け継いだ
今やダイラセンに匹敵する質量を持った虎珠皇は、小さな巨神と呼ぶべき存在である!
「虎珠皇……周りを気にせず、やっちゃって」
数十メートル後ろから呼びかけてきた刻冥は、翼のドリルを自身の周囲へ放射状に展開している。
八つのドリルが回転し亜空間の壁を作り出す。壁はドームのようにつながって、ギガラニカ内部から脱出した嵐剣丸、力を使い果たした濤鏡鬼と彰吾らを自身とともに包みこんだ。
刻冥のバリア展開を合図に、虎珠皇の両腕で
「調子に乗るんじゃあない! もろともに呑み込まれなさい!」
ギガラニカの胸部、鯱のあぎとが開き喉奥から渦巻く水流が放たれた。
チタン合金をも切断する水のドリルだ! その直径、実に4.8メートル!
砂塵を巻き上げて虎珠皇が跳ぶ。
両腕のドリルを突き出して水流ドリルと真っ向から激突!
万物破砕のドリルとぶつかった瞬間、水の柱が砕け散る。
霧散した水柱の向こうから飛んでくる――鯱の
開いた大口が虎珠皇をひと呑みにした!
静寂は数秒。
しかる後、響き始めたのは幾度もの金属音だ。
ゴォン、ゴォンと音が鳴り、その度に鯱の顔にコブができる。
内側から何度もデタラメに叩かれて、いびつに歪んで膨らんで、鯱の顔面は破裂!
中から飛び出した虎珠皇はUFO軌道でギガラニカの頭上、上空100メートルで両腕ドリルを構えた。
「小僧がァ……!」
その視線、その殺気と共に伸びあがってくる触手ドリルを見下ろして。
虎珠皇は黒く染まったドリルを廻す。迸る
「ドリル奥義――――!」
一言だけ口にして、虎珠皇が降下を始める。
小さな身体から放たれる
先行したプラズマの波が触手ドリルを引き裂く。
ギガラニカは動けない。大地を我が物顔で揺るがした巨体が、身じろぎひとつ許されず不可視の
「うぐ……あ、ああ……あ……!」
ギガラニカが呻く。力の前に、うめく。
力の中心には――ギガラニカの視界の中心には、12000年前以来ひさしく感じていなかった“
「――――炸裂大螺旋!」
蛇髪の女の眉間に虎珠皇のドリルが突き立つ。
その瞬間、内側に込められていた質量が一気にエネルギーへと転じた!
黒く廻るドリルの切っ先を中心にして、白い光が一気に拡がる。
黄色い砂も、青空も、すべてを等しく塗りつぶす
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